誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる

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また、大学院修了後の所得が高卒と比較してどのくらい高くなっているかを比較すると、日本の男性大学院修了者は高卒男性より47%所得が高くなっている。

しかし、アメリカ(同72%)やドイツ(同59%)と比べると、高度なスキルを持つことに対する「プレミアム(金銭的な見返り)」が大きいわけではない。日本はある意味で平等ともいえるが、高い専門性を得るために学歴に投資をするインセンティブが弱く、イノベーションの担い手を増やす環境が十分ではないということだ。

知的好奇心や世の中に貢献したいという使命感から大学院に進み、研究活動をする立派な人ももちろん多くいるが、その後の不確実性から二の足を踏む人も少なくない。そうした人の背を押すためにも、もう少しインセンティブを考える必要があるだろう。

専門性やスキルに投資する魅力が欠けている

アメリカは、高等教育段階でSTEM(科学・技術・工学・数学)分野に大量の留学生を受け入れており、彼らがさまざまなイノベーションの担い手にもなっている。彼らは、アメリカの労働力全体の17%、STEM分野の23%を占め、1990~2000年にノーベル賞を受賞したアメリカの研究者のうち26%が海外出身者になっているという。

今の日本の環境では、こうした動きも望むべくもない。

もちろん、イノベーションは学歴やスキルだけで生み出されるわけではない。しかし、専門性やスキルに多くの投資をする魅力に欠けているのに、多くのイノベーションを期待するのは酷な話であろう。

こうした状況は一気に変えられるものでもないが、専門的なスキルを持つ人材が多く育成され、(成功すれば)多くの見返りを得られるような環境づくりをしていかなければ、いつまでも状況は変わらない。

『君主論』で有名なイタリアの政治思想家マキアヴェリは「君主たるものは、才能ある人材を登用し、その功績に対しては十分に報いることも知らねばならない」と述べている。

この言葉は、今の日本でも省みる価値があるように思われる。最近は、人的資本への投資や賃上げの必要性が叫ばれるようになっている。その中でこのような問題も解決されていくことを望みたい。

木内 康裕 日本生産性本部 生産性総合研究センター 上席研究員

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きうち やすひろ / Yasuhiro Kiuchi

1973年茨城県生まれ。立教大学大学院経済学研究科修了。政府系金融機関勤務を経て、2001 年 日本生産性本部に入職。2003年から生産性研究センターで生産性分析、及び各種調査研究に従事。専門は生産性に関する統計及び経済分析。国際的にみた日本の労働生産性の実態など主要国との比較にも詳しい。

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