デフレだった日本にとって喜ばしい事態?
新型コロナウイルスの感染は、依然多数の感染者数を出しているものの、世界的にも死者数の増加傾向が止まり、欧米諸国を中心に行動制限をほとんど解除していることから、峠を越えた感がある。しかしながら、この感染拡大を乗り越えた先に見えてきた経済の姿は、感染拡大前とは異なった様相を見せている。
新型コロナウイルスが発生する前の2010年代は、多くの先進諸国がリーマン・ショック後の長期停滞に苦しんでいた。ローレンス・サマーズ・ハーバード大学教授が使った「secular stagnation」という言葉自体が、1930年代の不況時を表す用語からの借り物であった。
需要不足に伴うデフレにより、日本を含む中央銀行は金利をゼロまたはマイナスにまで低下させ、景気拡大に躍起となっていた。しかしコロナからの感染明けまたはウィズコロナの世界は、一転インフレに悩まされる世界となった。
これは喜ばしい事態ではないのか。とくに日本では20年近くにわたりデフレに悩まされ、インフレの到来を心待ちにしていたのではないのだろうか。アメリカでは昨年から5%を超えるインフレが続いているが、日本の場合は目標としていた2%のインフレ率を超えたのはまだ7カ月程度である。
しかし現在こうした楽観的な見方は少ない。なぜだろうか。
最も大きな要因は、2010年代に期待されたインフレと今回のインフレは、その要因が異なるからである。
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