実は今回のバイデン政権もレーガン政権のように供給サイドをテコ入れする政策を取ろうとしている。2022年1月のダボス会議で、ジャネット・イエレン財務長官は、バイデン政権が進めている政策をModern Supply Side Policyと名付けている。
彼女の講演録によれば、Modern Supply Side Policyとは、レーガン政権の規制緩和や民間投資促進策に加え、インフラ、研究開発投資、人的投資、環境投資を支援する政策として位置づけられている。つまり今回のバイデン政権の政策は、潜在成長力を引き上げ、それを持続可能にすることを目的としている。
もちろん、こうした供給サイド支援策は、共和党の看板政策だったものを民主党が採用することの違和感や政府の介入度合いが強いことから批判も多い。実際、2022年8月に成立したインフレ削減法案は、環境対策への支援は含まれているものの、イエレン財務長官の構想の一部を実現したにすぎない。
しかし、こうした供給制約ショックに対して中央銀行がインフレの抑制に注力し、政府が長期的な供給サイドの改善対策をとるという姿勢は、40年前も今も政権党が異なるにもかかわらず変化はない。それは、アメリカに標準的なマクロ経済学の考え方が根付いていることの証しでもある。
石油危機のときはアメリカと同様の手法を模索
日本も2度にわたる石油危機では、意識したわけではないが、現在のアメリカと同様の手法を模索していた。最初の石油危機では金融緩和政策を続けたため、歴史的なインフレを経験しているが、2度目の石油危機では最初の失敗にこりて、迅速な金利の引き上げによってインフレ率は第1次石油危機よりは低めに抑制することができた。
問題は実体経済である。第1次石油危機後、石油依存が強かった日本経済は0%成長になるとの予測もあったが、これを何とか安定成長へとこぎつけた背景には、厳しい構造改革があった。鉄鋼、化学などのエネルギー多消費型産業は事業の拡大が止まったが、代わりに輸送用機械や電気機械産業が燃費の低いエンジンの開発やエネルギー消費の少ない製品の開発によって成長した。この産業構造の転換がアメリカよりも早かったために、日本は1980年代の繁栄を享受することができた。
それでは、今回の危機を乗り切り、安定的な成長軌道へ服するために、日本はどのような選択をすればよいのだろうか。
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