誤解多い「日本の生産性」物価高の今、やるべきこと 日本に欠けている「ポスト・コロナの構想力」

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2010年代に期待されていたのは需要を喚起することで、景気の増進とともに物価が上昇する現象であった。しかし、現在われわれが直面しているインフレは、生産側の生産要素の供給制約が引き金になっている。

このインフレは需要喚起策によるものではなく、コロナ禍からの急速な回復に供給側の生産要素調達が追いつかないことに加え、2022年2月に起きたロシアのウクライナ侵攻により農産物やエネルギー資源の不足が生じたからである。

過去2回の石油危機同様、こうした供給制約は生産の減退を伴ったインフレなので、景気を悪化させる。日本銀行は今回のインフレを賃金の上昇を伴っていないという理由から、金融緩和策を緩める気配はない。

しかし下図で見るように、日本の場合は、企業物価指数の上昇率が、2~3%の消費者物価指数をはるかに上回っている。

(外部配信先では画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

これは企業の販売価格の上昇よりも原材料など労働以外の生産要素価格の上昇率が高いことを意味する。このようにコストの増加を売上価格に十分転嫁できない状況で、いったいどのようにして賃金を上げればよいのだろうか。その方策を政府や日本銀行は教えてくれていない。

ここでは、こうしたやっかいな経済状況で、生産性向上策が果たす役割について述べていきたい。

第2次石油危機以来のインフレ

今回のインフレは、国内企業物価指数が消費者物価指数を大きく上回るという点で、第2次石油危機が起きた1970年代後半から1980年代初め以来といってよい。

2022年に入ってから現時点までFRBは6回にわたる政策金利の引き上げを実施しているが、これは1979年にFRB議長に就任したポール・ボルカ―氏が実施した厳しい金融引き締めを想起させる。当時政策金利は一時的にせよ20%近くに達していた。

すでに述べたようにこうした金融引き締め政策では景気は縮小する。これを補う政策が石油危機時にはレーガノミクスだった。一般的にレーガノミクスは供給サイドの政策といわれる。この政策の代表的なものは、投資税額控除や大胆な償却率の見直しにより、税引き後の投資収益率を引き下げ、設備投資を促進しようとする政策である。

アメリカは1970年代の後半から生産性の低迷に悩まされていた。レーガノミクスは、新たな投資によって生産性を改善すると同時に、供給能力を増やしインフレ圧力を緩和しようとする政策だったといえる。

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