非正規雇用が「日本の生産性」低迷させる根本理由

「最低賃金の引き上げ」なくして経済の復活なし

「非正規雇用」を増やしたのに「最低賃金」を十分に上げてこなかったことが、生産性低迷の元凶だといいます(撮影:梅谷秀司)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
今回は、「非正規雇用を増やした以上、最低賃金を引き上げないという選択はありえない」ということを解説してもらう。

「最低賃金引き上げ」は先進国の常識になった

日本では今、最低賃金引き上げの議論が佳境に入っており、7月中に決着することが見込まれています。

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そんな中、諸外国では最低賃金の引き上げが相次いでいます。2021年の引き上げ率は、アメリカで4.3%、EU27カ国の平均は2.5%でした。最近発表された上海は4.5%、オーストラリアは2.5%、カナダは11.6%となりました。また、韓国は来年の最低賃金を5.1%引き上げると決めています。前回の記事(「最低賃金1178円」が国際的に見た常識的な水準だ)で指摘したとおり、先進国の最低賃金は次第に1178円に収斂していっています(購買力調整済みの金額)。

日本よりコロナによる打撃が何倍も大きく、経済対策が日本より小さいにもかかわらず、多くの先進国で最低賃金が引き上げられているのです。

これらの国では、最低賃金は経済の専門家と統計分析を中心とした専門委員会が、ビッグデータなどをベースにして、科学的根拠を重視して決定しています。特に、アメリカではワクチンの普及が進み、飲食・宿泊業で雇用と賃金が最も伸びていることに注目したいです。

対照的に、日本の最低賃金は、中央最低賃金審議会において、労働組合と商工会議所などという利害関係者が「腕相撲」をして合意するという、時代遅れのやり方で決められています。科学的根拠に乏しく、ただの感情論になりかねない危険な決め方で、経済発展の機会を犠牲にしています。

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