非正規雇用が「日本の生産性」低迷させる根本理由 「最低賃金の引き上げ」なくして経済の復活なし
日本の商工会議所などは、生産性を上げてから最低賃金を上げるべきだと強調しますが、この論文からすると、その考え方は間違いです。
さらに労働分配率は、生産性が向上している先進各国でも、低迷している日本でも継続的に低下しています。この事実からわかるように、生産性が上がっても、賃金が上がる保証はどこにもないのです。ですから、商工会議所の指摘は説得力がありません。
やはり、商工会議所は経済学の専門部隊ではなく、あくまでも中小企業の経営者の利益を代表する組織だと理解して、発言を割り引く必要があります。
「イタリアの失敗」は日本でも非常に参考になる
G7の中で、労働市場の規制緩和の悪影響を最も強く受けたのは、日本とイタリアです。
そこで、非正規雇用と生産性の関係をさらに深く検証するために、興味深い論文をご紹介します。「Reforms, labour market functioning and productivity dynamics: a sectoral analysis for Italy」という、イタリア政府が発表した論文です。イタリアの論文を参考にするのは、90年代以降、日本とイタリアの経済動向には共通点が多く見受けられるからです。
日本もイタリアも1945年以降に高度成長期を迎えました。日本もイタリアも、1980~90年あたりまで、高度成長の経済モデルとして絶賛されていました。
さらに1990年以降、両国では経済成長率が大きく低迷し始めて、2019年にはアメリカやドイツから大きく引き離されています。1990~2019年の間、先進国のGDPは平均1.89倍、OECDでは1.87倍、人口増が続いているアメリカのGDPは2.03倍になりました。しかし日本のGDPは1.32倍、イタリアのGDPは1.23倍と低調でした。ちなみに、韓国経済はこの間、4.07倍に増えています。
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