誤解が多すぎ「日本の賃金が上がらない」真の理由 「短期的な賃金上昇策→物価上昇の好循環」の罠

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生産性と賃金の関係について解説します(写真:masa/PIXTA)
日本の経済成長を議論するうえで、「生産性の低さ」は大きな課題となっている。労働生産性を見ると、主要先進7カ国(G7)で最も低く、OECDでも23位にとどまる。
ただ、生産性に対する誤解は少なくない。「生産性が低い」と感じる人がいる一方で、「こんなに一生懸命働いていて、もうこれ以上働けないくらいなのに、生産性が低いといわれても……」と思う人もいる。
はたして生産性とは何なのか、生産性を向上させるためにはどうすればいいのか。生産性の謎を解く連載の第3回は、「生産性と賃金の関係」について、学習院大学経済学部教授の宮川努氏が解説する。

日本経済の低迷が続く中で、「日本は生産性が伸びないから、低迷が続いている」という議論が行われている。一方、賃金もまた長期にわたって低迷を続け、2022年7月に行われた参議院選挙の重要な争点の1つになった。

経済学者は、こうした長期にわたる賃金所得の低迷の背後には必ず生産性の動向が関係していると考えているが、生産性への言及は少ない。ここでは、この問題を労働生産性という概念を使って簡単に説明し、生産性向上こそが賃金上昇の王道であるということを述べたい。

そもそも「労働生産性」とはどういうものなのか

労働生産性というのは、代表的な生産性指標で、労働者1人当たりどれくらいの生産量(または付加価値量)が達成できているか測っている。これは、生産量を労働投入量で割ったもので表される。

労働生産性=生産量(付加価値量)/労働投入量

労働者1人当たりの生産性といった場合は、上の式の労働投入量を労働者数で測った場合である。

ただ、同じ労働者数でも労働時間が異なる場合がある。片方の企業が残業の多い企業であり、もう一方の企業の労働者はほとんど残業がない企業だった場合は、同じ労働者数でも労働生産性は違ってくる。

したがって労働生産性をより正確に計測しようとすれば、人数だけでなく労働時間も考慮して労働投入量を労働者数×総労働時間数(これをマンアワーと呼ぶ)にして、労働時間単位当たりの生産量にしたほうが正確に測れる。このため労働時間が把握できる場合は、なるべく分母はマンアワーで測られている。

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