さて企業の売り上げは、大きく原材料費、人件費、利潤に分けることができる。利潤の中には、金融機関からの借入金利も含まれる。売り上げに占める原材料費、利潤の割合は一定と考える。
例えば、原材料費の割合が60%、利潤の割合が10%とすると、人件費の割合は30%となる。そうすると人件費=売上高×0.3となる。
人件費を単純化して示すと、1人当たり賃金×労働者数となる。一方、売上高は、製品価格×販売数量である。これを上の式に代入すると、
である。上の式の両辺を労働者数で割ると、
ということになる。この式の最後の項(販売数量/労働者数)は、販売数量が生産量とほぼ同じであれば、労働生産性と同様の概念になる。したがって労働生産性が上昇すれば、1人当たりの賃金も上昇することになる。
製品価格の上昇で、労働者が豊かになるとはかぎらない
逆に労働生産性が上昇しない場合、1人当たりの賃金を上昇させるためには、労働者への分配率(0.3)が上昇するか、製品価格が上昇しなくてはならない。ただ製品価格が上昇してそれで1人当たり賃金が上昇したとしても、労働者が必ずしも豊かになるわけではない。
製品価格の例を光熱費と考えると、1人当たり賃金が上昇したとしても、同じだけ光熱費が上昇していれば、労働者としては、より電気やガスが利用できるわけではなく、前と同じだけの使用料分の賃金を確保できただけなのである。
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