一般に、中小企業の労働生産性は、多くの分野で大企業より低いといわれている。
中小企業をどう定義するかにもよるが、例えば中小企業白書(2022年版)をみると、製造業の労働生産性(従業員1人当たり付加価値)は大企業で1180万円だが、中小企業では520万円にとどまっている。非製造業でも大企業が1267万円であるのに対し、中小企業は520万円である。つまり、中小企業の労働生産性は大企業の半分以下でしかない。
そのため、中小企業の生産性が向上すれば日本全体の生産性向上にもつながるといわれてきた。とくに中小企業が多いサービス産業分野を中心に、多くの企業や政府、民間団体などがさまざまな取り組みを行ってきた経緯がある。
日本の中小企業の6割以上が赤字の理由
もともと、日本の中小企業は6割以上が赤字である。東京商工リサーチによると、コロナ禍の影響が本格化しない2019年度でみても赤字(欠損)法人の割合は65.4%にのぼる。2010年前後に75%近かった状況からは改善傾向にあるものの、おおむね3分の2の中小企業が赤字ということになる。
このような赤字企業は、業績不振で多くの付加価値を生み出せなかったところももちろんあるが、税制上のメリットを享受するために会計上赤字にしている企業も少なくないと昔から言われている。
これは、赤字だと法人税負担が大幅に減り、場合によっては還付金を受け取れること、繰越欠損金控除を利用してその後も赤字を繰り越せることなどが認められているためだ。
資金繰りの厳しい中小企業が、合法的な範囲で節税に励むのはもちろん悪いことではない。しかし、このような行動が中小企業の付加価値創造を抑制してしまえば、労働生産性を押し下げる要因にはなっても、労働生産性の向上に結び付くとは考えにくい。
生産性のみならず、日本経済の成長性や活力を考えるうえでも、こうした企業をどうしていくことが望ましいのかは考える必要があるだろう。
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