誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる

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問題は、日本ではなかなかそのようなダイナミズムがなく、ともすれば現状維持に意識が向きがちという点だ。

中小企業の方と話をしても、事業改革や生産性向上のために何かしたくても人がいないという話をよく聞く。さまざまな業務を担ってくれる人手が足りないということだけでなく、ICT活用や事業のデジタル化などを含めて生産性をどう向上させていくかを立案・実行する人材がなかなかいないという意見が多い。

経営者自身、あるいは後継者がそうしたキーパーソンになれれば、問題はあまりないかもしれない。しかし、そうでない場合にはどう人材を育成・確保するかを考える必要がある。これは中小企業だけでなく、大企業にも当てはまる課題といってよい。

大学院修了者を活用できていない日本

企業や経済の成長や生産性向上には、イノベーションが欠かせないとよくいわれる。そのイノベーションを起こすにあたっても、人材の問題は避けて通れない。働く人が一生懸命に頑張ることも大事だが、イノベーションを生み出すための研究開発やマネタイゼーションには専門性の高い有能な人材が欠かせないからだ。

日本生産性本部とアメリカ・ブルッキングス研究所による研究によると、高度なスキルを持つ大学院修了者の比率が日本では3%に満たず、10%を超えるアメリカやドイツの1/3以下でしかない。これでは、イノベーションの担い手になる高度なスキルを持つ人々が少なすぎるといわざるをえないだろう。

しかも、政策的に支援が講じられつつあるとはいえ、博士号を取っても仕事がないポスドク問題などをみるかぎり、その数少ない人々すら十分に活用できているか心もとないのが実情だ。

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