日本人が失った富「デフレ30年」の何とも重い犠牲 GDP世界3位でも"1人当たり"28位に後退の意味

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負のスパイラルに陥った日本経済の30年を総括する(写真:Akio Kon/Bloomberg)

日本経済がデフレに陥って四半世紀以上の歳月が経過した。インフレが世界中で進行し、日本でもさまざまなモノやサービスの値段が上がり始めているが、長引いたデフレによる低価格競争の体質はまだ色濃い。

デフレ経済は、経済成長をベースに考える資本主義社会にとっては「負のスパイラル」を生み出すが、すっかりデフレに慣れ切っている日本国民にとって、現在のインフレは、未体験という人も多い。デフレが始まってからざっと30年。この30年で日本国民がデフレによって何を失ったのか、総括してみたい。

莫大な富が消えた「資産デフレ」の30年?

日本がデフレ経済に陥ってしまったのは、1980年代後半の「バブル経済崩壊」による株価や不動産価格の暴落が原因だ。株価は1989年の12月29日の終値で最高値を付けた後、30年間にわたってその最高値を1度も上回ることなく、現在に至っている。1991年には、土地価格などが大きく下落する「資産デフレ」が始まり、1992年には物価上昇率が下落する「ディスインフレ」の状態に陥る。

ディスインフレは、インフレではないがデフレにもなっていない状態のこと。この30年の日本経済はデフレではなくディスインフレだとする考え方もある。このディスインフレをデフレの入り口とすれば、今年でちょうど30年。年ベースのデータでは1999年になって物価上昇率が下落を始めてデフレに陥るのだが、多くの人の感覚としてはバブル崩壊から1~2年でデフレが始まったという認識を持っているはずだ。

その30年のデフレの中で、日本は数多くのものを失ってきた。GDPこそいまだに世界第3位を保っているが、1人当たりのGDPはいまや世界第28位(2021年、IMF推定値)に落ち込んでいる。まずは、日本国民がこの30年に失った「富(資産)」について見てみよう。

⚫️株式市場……日経平均株価でみると、1989年大納会の最高値が「3万8915円87銭」、現在(2022年8月26日終値)は「2万8641円38銭」。30年経過してなお、平均株価は4分の3程度にしか回復していない。発行済み株数にその時点の株価をかけて算出する「時価総額」は、単純な比較は難しいが、たとえば世界最大だった1989年末では611兆円(東証1部)。それに対して2022年7月29日現在では727兆円(日本取引所グループ株式時価総額)となっている。

1989年末の水準を上回っているものの、当時日本市場より時価総額が低かったニューヨーク市場は、現在約3225兆円(2022年5月末、野村資本市場研究所調べ、以下同)、ナスダック市場も2437兆円、中国の上海市場は882兆円に達している。ほとんど増えなかった日本に対して、海外の時価総額は大きく伸びているわけだ。30年という歳月で株式という資産を増やせなかったということは、大きな損失と言える。

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