日本人が失った富「デフレ30年」の何とも重い犠牲 GDP世界3位でも"1人当たり"28位に後退の意味

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バブル崩壊によって、日本特有の「終身雇用制」も危うくなったのだが、小泉政権時代には非正規雇用の概念を大幅に拡充して、終身雇用制を守った。一方で、大量の非正規雇用者が発生して貧困に陥り、最終的には結婚できない若者が急増し、少子化にも拍車をかけた。非正規雇用の拡大は、低賃金という副反応を発生させ、個人消費の拡大にもブレーキをかけた。日本経済がデフレから脱却できない一因になったといってもいい。

正規雇用と非正規雇用の賃金格差……厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、正規社員・正規職員の平均賃金は324万円(2020年、以下同)、対して正規社員・正規職員以外の平均賃金は214万円。実に110万円もの格差がある。さらに、女性に限ると193万円。この格差も、30年間のデフレ経済によって生じたものと言っていいだろう。

日本の潜在的成長力が大きく減退した30年だった?

このほか、日本がこの30年で失ったものの中には、日本の経済成長力がある。よく指摘されるのが、日本の「潜在成長力」の減退だ。潜在成長力とは、中長期的に持続可能な経済成長率を維持できるかどうかを示す指標のことで、設備投資などの資本や労働力、生産性といった分野で、日本経済が確実に成長できるのかが問われる。

莫大な財政赤字が積み重なっている現在、日本国内からの資本(投資)は期待できず、労働力も少子高齢化で望み薄。残る生産性も低い。実際に、日本企業の生産性の低さはデフレ経済の原因の1つとさえ言われてきた。官民そろってデジタル化の進みが遅い。政府はデジタル庁などを開設して生産性の向上に努めているが道は遠そうだ。

労働生産性……OECDがまとめた「就業者1人当たりのGDP」で見ると、日本の場合は、2000年=7万1621ドル、2020年=7万5032ドル。OECDの平均値では、2000年=7万7190ドル、2020年8万9927ドル。G7では最低、OECDでも下位グループに属する。ちなみに、労働力1人当たりのGDPでも、1990年=706.6万円だったのが、2018年には821.5万円(IMF、総務省労働力調査)という調査もある。労働生産性はわずかだが伸びているものの、30年間の数字としては極めて鈍い。

今回の新型コロナウイルスによるパンデミックでは、感染者の全国集計にいまだにファックスを使ったり、ワクチン接種証明等がうまくデジタル化できないなど、デジタル化の遅れが重なった。そもそもマイナンバー制度の普及に、なぜこんなに時間とお金がかかるのか。コストをかけるためにわざと遅らせているとしか思えないような節がある。

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