日本人が失った富「デフレ30年」の何とも重い犠牲 GDP世界3位でも"1人当たり"28位に後退の意味

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⚫️不動産市場……日本の土地価格が、バブル崩壊後の約20年を経て10分の1になったことはよく知られている。近年、都市部での土地価格はやや持ち直しているものの、地方では相変わらず土地価格の下落が止まっていない地域が多い。人口減少や高齢化などとも密接な関係はあるものの、30年間のデフレ経済で土地価格の下落が、日本国民の「富」に大きな影響を与えたことは間違いない。

バブル時代、山手線内の土地価格総額はカナダ全土より高い、といったことがまことしやかに報道されたものの、土地価格の下落によって日本の個人消費に大きな影響をもたらした。土地転がし、という言葉を聞かなくなって久しいが、不動産を転売することでマンションから戸建てへとマイホームのグレードアップができたのも、昭和のなつかしい思い出となってしまった。

ちなみに、1999年までは国土交通省が日本の土地価格の総額を公表していたのだが、そのデータによると1990年の日本の土地価格総額のピークは「2470兆円」と報道されている。土地価格の合計データは、現在は内閣府の「国民経済計算」の中に統括されているようだが、現在は「1246兆円」。単純な比較は難しいものの、ほぼ半分になった勘定になる。

ただ、それでもGDPの2倍程度になっている。地価の適正水準は、GDPとの比較で判断されることが多いのだが、地価の適正水準はGDPの1.0~1.2倍とされている。そう考えると、日本の土地価格は国際水準から見ても、まだ高いことがわかる。

個人金融資産は2倍に伸びたが…

国富……日本が保有している「富」はこの30年でどうなったのだろうか。内閣府が算出している「国民経済計算年次推計」によると、2020年末の国全体の正味資産(国富)は3668兆5000億円となっている。この数字を1990年末と比較してみると面白いのだが、残念ながら2016年に改定しており、単純な比較は難しい。ちなみに、最新の日本の国富を項目別に見てみると次のようになる(日経新聞、2022年1月25日朝刊)。

・固定資産……1986.7兆円
・土地…… 1246兆円
・一般政府(国、地方合計)…… 71.7兆円
・家計…… 2712.6兆円
・金融機関…… 194.9兆円
・金融を除く法人企業…… 577.3兆円

個人金融資産……1989年末の家庭部門における金融資産残高は925兆円(日本銀行、資金循環統計より)。約30年後の金融資産残高は、2023兆円(同、2021年度末)と2000兆円を超えるというデータが発表された。約2倍に伸びたことになるわけだが、これは個人資産が増えたと言うよりも、株式や不動産といったリスクのある金融商品を避けて、現金や預金を増やしてきた結果と言っていい。日本国民の資産が増えたというわけではないだろう。

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