
東日本のあるテレビ局に勤める太田信之さん(60、仮名)は今年3月に定年退職を迎えた。20代から寝る間も惜しんで仕事に没頭したが、8人の同期は1人、また1人と会社を後にした。同じ時期に定年を迎えた同期も、「65歳まで5年間も会社に拘束されるより、好きな旅行に出かけたい」と会社を去った。
太田さんは、「とくにやることもないし、家にいても一銭にもならない。好きな仕事をしたいと入った会社だし、再雇用で残ることにした」と話す。
賃金は4割程度まで激減
定年後も現役時代と変わらずデスク業務だが、待遇は激変した。1日8時間で週5日勤務は変わらないが、雇用形態は1年ごとの契約になった。一方で、管理職だった現役時代にはなかった残業手当が週10時間分つくが、トータルの賃金は4割程度まで激減した。
いくつもの企画で辣腕を振るった太田さんだが、40代で体調を崩して長期休業したことがある。会社復帰後、同期や後輩が相次いで部長や役員に昇進していったが、太田さんは現場一筋だった。
「あのとき会社を休まなければと思ったこともあったが、今は何のわだかまりもない」と太田さん。現役時代と変わらず、デスクとして若手の育成に励んでいる。
高年齢者雇用安定法が改正され、2025年4月からすべての企業に65歳までの雇用確保が義務づけられた。定年の廃止や引き上げ、または65歳までの継続雇用(再雇用)制度の導入のいずれかが求められる。
再雇用制度を選択する企業は約8割に上っており、従業員側もおおむね5割程度が同じ会社で再雇用を選ぶ傾向にあるようだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら