Netflix「広告付き新プラン」が破壊的で怖すぎる訳 月額790円の「羊の皮をかぶった狼」がやってきた
今回の発表からNetflixの戦略が二段ロケットの構造になっていることがわかります。最初は、地上波と同じ広告が入るプランを790円で提供する。これは「月1490円だったら払う気がしないけれども月790円だったら話題の『イカゲーム』や『全裸監督』をちょっと見てみたい」という新規ユーザー数を増やす結果になるでしょう。
「でもこれまで有料プランだった人も広告プランに移ってしまうから収入は減っちゃうんじゃないの?」と思うかもしれません。「月1490円ないしは990円の有料プランから790円の広告付きプランに移る人が増える」という状況になるのは、実はNetflixにとっては歓迎すべき状況になるかもしれません。
なぜか。それはコンテンツを配信するよりも広告を配信したほうがはるかにビジネスとして儲かるからです。ここがNetflixの戦略にとっての二段ロケットに相当します。
潜在的に4倍の広告収入が受け取れる可能性
情報通信白書から数字を拾うとネットオリジナルの動画コンテンツの市場規模が5305億円であるのに対して、地上波テレビのコンテンツの1次市場は2兆1038億円とその4倍の大きさがあります。理由はその大半が広告宣伝費から制作費がねん出されているからです。
つまり広告付きプランを選択した加入者に対しては、月790円に加えて潜在的には4倍の広告費収入が受け取れるようになるかもしれない。あくまでNetflixの広告付きプランがメディア規模として相応の視聴者数を抱えるようになった場合の計算ですが、そうなる可能性は十分にありそうです。
その広告費ですが同じ白書を見るとテレビが1兆8393億円であるのに対してネット広告が2兆7052億円です。2018年に初めてネット広告市場がテレビを上回って以降、ネット広告がどんどん勢力を増やしているわけです。
これは当たり前の話なのですが、漠然とテレビを見ている視聴者に新築マンションの広告や年金についての信託銀行の広告を打っても効果はそれほど高くはありません。しかし近所で新築マンションを検索した人や年金を検索した人に向けて、不動産会社や信託銀行の広告を表示すれば効果はずっと高くなります。
ここが実はNetflixが狙える最終戦争の戦場になる可能性があります。というのは、ネット広告市場は2兆7000億円規模まで増大したのですが、もっと効果が高い広告の打ち方が存在するからです。
それがネットで新築マンションを調べた人がテレビを見ていると、近所の新築マンションのモデルルームのCMが流れたり、気になる新車の情報をスマホで調べた人にトヨタの新型乗用車の広告が流れたりするような、テレビ広告がターゲティングされる未来です。
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