中国の「過小評価」が日本にとって危険すぎる理由 日本のメディアが伝えない圧倒的な4つの強み

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最後は「政府に対する国民の支持」です。中国の人々は、政府によって抑圧された息苦しい生活を強いられている、といったイメージを持ちがちですが、実際は、私たちと同じように暮らしています。むしろ「明日は今日よりよくなる」という成長期待も依然として高く、消費活動にも意欲的で、現政権や体制に対する反発が必ずしも大きいわけではありません。

政府の政策には、自由民主主義の観点からは容認できないものも多々ありますが、順調な経済成長を通じて国民の生活を豊かにしてきたという実績に裏打ちされた、政府や政策に対する「国民の満足度」は総じて高いと言えます。

共産党は国民の「満足度」を気にしている

共産党政権にも、国民の支持を受け続けなければ、現体制を維持できないという強い危機感があります。「共産党一党独裁」だから「何をやってもよい」ではなく、「共産党一党独裁」だからこそ「国民の満足度を高め、支持を受け続けなければならない」ということです。この「共産党政権の姿勢と国民の支持の高さ」は、しっかり認識しておくべきでしょう。

中国を必要以上に持ち上げるつもりはありませんが、日本の対中戦略を考えるうえでは、「中国は嫌い」「国家体制が違う理解できない国」といった感情論ではなく、冷静に相手の実態や実力を見極める必要があります。

中国の経済力が今後も着実に高まるとすれば、日本の経済や産業はどうなるでしょうか。中国が先端半導体を自国生産し、AIなどの分野で世界をリードする国になり、また、世界中で「親中国」が増えるとすれば、日本はどのような手を打つべきでしょうか。

負け戦の多くには「敵の過小評価」があったことは歴史が証明しています。日本は、その教訓を活かし、中国の実力を冷静かつ中立的に見極めたうえで、「新時代」に向けた「軍事一辺倒ではない多角的な対中戦略」をしっかりと議論すべきだと思います。

武居 秀典 DIC インテリジェンス室長

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たけい・ひでのり / Takei Hidenori

一橋大学卒業。三菱商事で主に調査・分析業務に従事。調査部長や北京現地法人社長を歴任。ロンドン、NY、北京などに計14年間駐在。2023年大手化学メーカーDICに移籍。

 

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