この改革は簡単ではありませんが、世界各国をひきつける「規模の力」は簡単に揺らぐことはありませんし、「質的転換」が実現すれば、低成長であっても、中国経済の世界におけるプレゼンスはさらに高まる可能性もあります。「成長率の低下」だけにとらわれすぎると、中国の経済力を見誤ります。
次に「技術力」です。よく、中国の技術力は「模倣にすぎない」と言われます。但し、技術力の発展プロセスにおいて「模倣」は特別なことではなく、日本も含め、多くの国が実践してきたことです。
問われるのは「模倣」の次のステップである真の「イノベーション力」です。中国には、ここで3つの利点があります。
第1に「政府の後押し」です。中国政府には、最先端の技術をアメリカに押さえられたままでは、いつまでたってもアメリカと対等な立場に立てないという強い危機意識があります。よって、政府は、AI(人工知能)や先端半導体などを国家戦略上の重点分野に指定し、公的機関のみならず、民間の研究開発も全面支援しています。
第2に、巨大な市場を活用した「社会実装力」です。自国市場が大きいので、新しい技術やビジネス・モデルを直ぐに試し、うまくいけば迅速に拡大できます。
第3に「イノベーションの土壌」です。中国のベンチャー経営者は、アメリカと同じく、2回3回の失敗は当たり前です。政府の規制も厳しいイメージがありますが、新しい技術やビジネス・モデルの開発などは、まずは自由にやらせてみるという姿勢です。
中国政府による「IT企業叩き」も、タイミング等のやり方には問題もありますが、実際には、消費者や個人情報の保護などを目的とした「妥当な規制」との見方もあり、国内のイノベーションの動きは依然活発です。強権国家で真のイノベーションは起こりえないといった声もありますが、アメリカにも似た土壌を持つ中国のイノベーション力は過小評価できません。
中国の友好国は着実に増えている
3つ目は「友好国ネットワーク」です。日本人が「親日」と疑わない「東南アジア諸国」も例外ではありません。中国が経済力で圧力をかけていてけしからん、という声もありますが、日本人が思っているほど、中国が世界中から嫌われているわけではありませんし、自由民主主義が世界にあまねく浸透しているわけでもありません。
中国と友好関係を築くことで、同国の巨大な市場にアクセスできることは、多くの国にとって大きな魅力です。認めにくいという点では、ウクライナ侵攻に対するロシアへの経済制裁に同調した国が意外と少なかったという現実に似ているかもしれませんが、中国の「友好国ネットワーク」は着実に拡大しています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら