9月29日、日本と中国は日中国交正常化50周年を迎えました。10月16日に開幕する中国共産党の全国代表大会では、習近平党総書記の3期目続投が決まる予定で、まさに日中両国は「新時代」を迎えようとしています。
この「新時代」に大きな影を落としているのが「台湾問題」です。近年、アメリカの台湾への関与姿勢が強まる中、日本でも「台湾有事を想定した防衛力強化」が声高に叫ばれ、「防衛費のGDP2%への引き上げ」はいつの間にか既定路線になりつつあります。
中国が台湾との統一を悲願としている以上、日本も、台湾有事を想定した「軍事面での準備」は必要ですが、日本にとって、中国は、最大の貿易相手国であり、もはや中国抜きでは日本経済も成り立たないほど、経済的な結びつきは強くなっています。「対中戦略」を考えるうえでは、軍事面に偏重せず、「多角的」かつ「中長期的」な視点が必要です。
ところで、古くから「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」と言われますが、「対中戦略」検討の前提として、私たちは、中国のことをどこまで理解しているでしょうか。
日本の報道では見えない中国の強み
日本の報道や書籍では、中国の失敗や欠点を強調したものが多く、「中国は大国だが世界で孤立」「経済も衰退」「習近平は傍若無人」「抑圧された国民が耐え切れず、共産党政権も長続きしない」といったイメージを持っている読者も多いかもしれません。
ただし、本当にそうでしょうか。ここで、我々が侮ってはならない中国の強みを4つ挙げてみたいと思います。
まず「経済力」です。近年、「中国の成長率は2030年に向け3%台まで低下し、経済は徐々に衰退」といった論調をよく見ます。これまでの経済成長を支えた労働人口の増加が減少に転じたこと等もあり、今後、成長率が低下していくことは間違いないでしょう。
ただし、単純に「成長率の低下=経済の衰退」とみてよいのでしょうか。どの国でも、経済発展初期段階の高成長を続けると、ある段階で「量的成長」が行き詰まり「質的転換」を余儀なくされます。
中国経済はまさにこの段階にあり、中国政府も、外需依存から内需主導への転換、労働集約型から高付加価値型への製造業の高度化、製造業中心からサービス産業の育成、といった構造改革を積極的に進めています。
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