かっぱ寿司社長逮捕が転職者に他人事ではない訳 前の職場で驚かれた後で捕まらない為の転職ルール

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さて、とはいえ捜査が入り当事者が逮捕される事例では、持ち出す営業秘密はもっとあからさまなもので、かつ証拠がはっきりと残っているケースが多いようです。

持ち出す際にはUSBメモリにファイルをコピーするなどの行動をとり、そしてそれを無邪気にプリントアウトして転職先で配ったりする。退職後に内偵が入れば悪事が露見するわけです。

転職先が一枚岩なら話は別ですが、その転職先から元の会社へと転職する社員もいるわけで、ばれないと思っていた営業秘密の持ち出しがばれ、これくらいなら大丈夫と思っていた秘密が実はアウトだという現実が目の前に突き付けられる。そんな事件はこれから先もしばしば起きてくる可能性は高いと思います。何しろ日本社会がまだ人材流動化に慣れきってはいないからです。

ライバル会社への転職で気をつけたいこと

最後に個人としてライバル会社に転職する際に気をつけることを3つお伝えしましょう。

1つはライバル会社に移る以上、自分の価値をできるだけ高く売り込むことです。いろいろと事情があってのライバルへの転出です。相手が勝手に高く評価してくれるのはむしろチャンスだと割り切るのです。なにしろ日本社会では転職を期に前の会社と縁が切れる可能性も十分にあるのですから。

2つめは営業秘密の持ち出しはやめたほうがいいということです。退職を決めた段階で、いくら自分が作成した書類でも「これからは他社の企業の営業財産なのだ」と認識しなければなりません。不正だとわかっていて情報の持ち出しに手を染めるのは自分の人生にはマイナスだと私は思います。

3番目は転職先では前職の経験を大いに生かすことです。

「前の会社ではこういうとき、どうやっているのかい?」

と転職先で聞かれたら、ゆっくり深呼吸をしながら、

「そうですね、営業秘密をしゃべることはできませんが、こういう言い方ならしてもいいと思うんですよね」

みたいな前振りと、その後に話す内容をあらかじめ頭の中で練習しておくのはよいことだと思います。

「僕はもうこっち側の人間ですから、過去の経験をできるだけこの会社のために活用していけたらと思うんですよ」

と口にして、今のポジションで役立つ話をする。サッカーでは相手のユニフォームを見えないところで引っ張るような行為をマリーシアというのですが、ビジネスの世界にもマリーシアはあります。イエローカードにならないように話せる内容をよく計算しておくことです。

文章を書くときと同じでコピペはダメなのですが、でもその人が持っている経験を次の仕事でプラスに使うのは許される範囲です。逮捕され損害賠償を請求されるようなリスクをとらなくても、新天地での活躍はいくらでもできるのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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