かっぱ寿司社長逮捕が転職者に他人事ではない訳 前の職場で驚かれた後で捕まらない為の転職ルール

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カッパ・クリエイトの業績推移

今回のケース、逮捕された社長は転職後もはま寿司の社員を通じて店舗情報をメールで入手していたといいます。幹部社員には共有されているデータだとしても、やはりこれは競合企業にとっては重要情報です。どの店舗の売り上げがいいのかが店舗毎にわかれば自社の出店計画をそれに合わせて対抗できるからです。

さて不正競争防止法違反で起訴され有罪となった場合、本人は10年以下の懲役もしくは2000万円以下の罰金、法人は5億円以下の罰金の判決が待っています。実はもっと怖いのは民事訴訟です。

2021年にソフトバンクの社員が楽天モバイルに転職した際に営業情報を持ち出した事件では、本人は逮捕され起訴され楽天モバイルを退職することになりました。そのうえでソフトバンクは楽天モバイルと元社員に対し約1000億円の損害賠償請求を主張しています。最終的に民事訴訟がどうなるかはこれからですが、個人としては自己破産の危機に直面する事態になったわけです。

日本の会社と日本人は営業秘密の扱いが甘い

さて、いろいろな事情があってライバル会社に転職することになる人が増えているのですが、日本の会社と日本人はこの営業秘密についてまだ脇が甘いケースが少なくないかもしれません。ここで一度「自分が捕まらないため」そして「会社の営業秘密を流出させないため」にどうすればよいのか、考え方をまとめてみたいと思います。

まず外資系企業ではこの退職者による営業秘密の流出リスクは契約で明記されているものです。これはアメリカの事例ですが、たとえば幹部社員の退職パッケージにライバル企業に移らなければ退職金はこれだけ、ライバル企業への転職だと退職金はこれくらいと決められていたりします。それが日本の法律上通用するかどうかという別の話もあるのですが、アメリカの場合、優秀な従業員については本人が退職を決める前にあらかじめ「競合に行かないインセンティブ」を金額で明示しておくのです。

とはいえ一定の確率で競合に移る従業員は当然出てくる世界です。資料のコピーや持ち出しは当然NGですが、アメリカの場合は少なくとも大企業のホワイトカラーに関しては退職後の守秘義務契約が交わされているケースが多いと思います。私が知る多くのケースでは一般の社員は1年、幹部社員は2年間、仕事で知りえた営業機密を転職先で口にしない約束をするのです。

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