「角乗」東京・木場で受け継がれる伝統ワザの極意 保存会メンバーの林野庁幹部が20年続ける理由
賑やかな練習風景
9月4日日曜の午前9時すぎ、木場公園の一角、イベント池のプールにブルーのTシャツを着た集団が現れた。「東京都指定無形文化財 木場角乗保存会」ののぼりを立て、プールサイドに並んで水に浮かべた角材をプールデッキでゴシゴシやりだした。
「毎週日曜朝に練習している。よかったら見に来て」。知り合いの福田淳(じゅん)さん(50歳)がそう教えてくれたので、のぞいてみた。福田さんは林野庁森林利用課の森林集積推進室長をしている。私は6年前に林業や森林関係の取材で福田さんの説明を受け、その後、福田さんが角乗に取り組んでいることを知った。
保存会は40~50代の男性が中心に違いないと勝手に想像していたが、若い人が目立ち、女性も4人いた。
女性用の駒下駄をはいて角乗をこなす宗重杏奈さん(32歳)に、「川並の仕事から生まれた角乗は、男のするものという印象があるけど」と聞いてみた。「そうですよね。絶対に女性なんかお呼びじゃない感じ」と応じた杏奈さんだが、すっかりはまっている様子だ。中学3年の時に始めたという。
「このイベント池が見えるマンションに住んでいて、『やってみたーい』と」。親戚の材木問屋を通してお願いし、練習に参加させてもらった。今は鎌倉に住み、毎週通ってくる。「大好きなんです。バランスとって技ができた時、それを何人もが見守ってくださって、一緒に喜んでもらえるのが楽しい」。
パシャパシャパシャ。軽快な水音をたて、華麗なフォームの武田興紀さん(21歳)は、「小学4年の時に始めたので、もう12年になります」。もともとは小学校の社会科見学で木場の角乗を見て興味を持ち、当時住んでいた江東区深川1丁目の町会関係者に勧められ、練習に来るようになった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら