職業は「自分の名前」人生をフカンでとらえる幸福 表層的なライフハック本にサヨウナラを告げる

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例えば、遺伝子の乗り物である自分が、なぜここにいるのかを長いタイムスパンで眺めたとき、そこには、身近な愛や、生きる中で感じる喜びなどが見えてきます。

ニヒリズムに陥っているときは、こういったものを遠ざけています。でも、人類としては、身近な愛や生きる喜びこそが本筋です。大きな視座で、長いスパンで見れば見るほど、そうしたことの重要性を理解できるわけです。

ジェイミーさんは、神と向き合うことによって意思決定していますが、日本人の場合は、宗教観が違いますから、自己対話がもっと複雑になっているのではないかと思います。

私の場合は、自分自身を「起業家」でも「大学生」でもない、「渋川駿伍」という職業なのだと考えるようにしています。これが、自己対話につながります。

自分の会社のことを、こんな会社でありたいとか、こんな会社にしたい、と客観的に考えるのは比較的容易ですよね。それと同じように、職業を自分の名前にして、「渋川駿伍という人」は「こんな働き方をしたい」「こんな家に住みたい」という夢や理想を考えてみると、現実とのギャップが見えやすくなるのです。

すると、その差分を埋めていくために、何を勉強すればいいのか、どこへ行って、誰に会えばいいのかといった課題が見えてきます。

「自分」という生き方を突き詰めていく。それならば、進みながら変化することに対しても納得できますし、説明もできるでしょう。

「自分の人生」は自分だけが歩むもの

そして、「渋川駿伍」になるという人生には、誰も足を踏み込めません。それは「渋川駿伍」のものであり、他の誰もそれを評価したり、追随もできないのです。さらに、自分という職業が体験したことは、人に伝えることができます。

ジェイミーさんも、本書のなかで自分自身を突き詰めています。彼女の真似をしようとしても、誰も同じ結果は出せません。彼女なりの持って生まれたギフトがあり、そこから出発して、自分らしく生きたからこそ、ここまで来られた。

ジェイミーさんは事業をバイアウトして資産を築き、社会的な幸せを手にしたはずです。でも、仮にそれをしなかったとしても、あるいは途中で失敗して廃業していたとしても、会社を始める前と比べれば、圧倒的に彼女は幸福だったのではないでしょうか。本書を読んだ誰もがそう思えるはずです。

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