紀の国屋「廃業→再スタート」の知られざる経緯 カレーパン作ろうとしていた会社が引き継いだ

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稲垣氏らはもともと、和菓子のネット通販のほか、リアル店舗で流行中のカレーパンを扱う事業を始めようと、昨年にアイ・スイーツを設立。同社は東京・湯島にあり、「周りには老舗和菓子屋が多いのですが、基本的に昔のままの経営で、ネットで売ればもっと売れるんじゃないか、と思う店が多いんです。うちで替わりに売れば、と思ったのが立ち上げの理由です」と、共同経営者の伊藤友幸氏が説明する。

再スタートまでの経緯はこうだ。紀の国屋が廃業してすぐ、職人たちが稲垣氏らのもとへ来た。

「彼らから、職人として尊敬する元社長の真心も引き継ぐことが、真の意味で紀の国屋を引き継いだことになる。そのためにはほかの会社で雇ってもらうのではなく、自分たちで会社をやる必要がある、と訴えられひどく感動しました」と稲垣氏。

カレーパン用の工場を和菓子工場に

ブランド立ち上げとお金集めを同時に行い、事業をスタート。もともと和菓子の倉庫やカレーパン製造で使うために武蔵村山で借りていた工場を紀の国屋の和菓子製造工場にしたという。

約20店舗を展開していた紀の国屋は、200人の従業員を正社員として雇っていたことから、今回3店を開いたアイ・スイーツでも、職人と店員の半数ずつ約20人を正社員として雇用した。

稲垣氏は、紀の国屋の税務顧問時代、経営が厳しい要因は人件費とみていた。経営が傾いたもともとの原因は、金利が高かった1993年に拡大を求めて工場を移転した金融負債。顧客の高齢化もあって売り上げ減少傾向が続く中、原料費の高騰、さらにコロナ禍での手土産需要の減少がダメ押しになって経営破綻した。

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