紀の国屋「廃業→再スタート」の知られざる経緯 カレーパン作ろうとしていた会社が引き継いだ

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに、新しい試みをいくつか始めている。

その1つが、アイ・スイーツ立ち上げ時の構想にあった、和菓子のセレクトショップとしての機能を店舗に持たせること。地方の銘菓を3カ月ごとに入れ替え、数種類ずつ販売する。9月までは松山の代表的な銘菓、一六タルトや岡山のきびだんごといった中四国の和菓子を扱っている。

地方のお菓子
店舗では地方の銘菓なども扱っている(撮影:今 祥雄)

次は九州の予定だ。選択の基準は、利益が取れること、東京の人が魅力に感じることが条件だが、和菓子屋のガードは固く、「10中7、8は断られます」と伊藤氏は語る。

AIを使った新商品の開発にも意欲的

AIを使って予測した、流行を取り入れた新商品、健康を意識した商品なども販売する予定だ。店内には、カメラマンが撮影した職人たちの写真も展示。パティシエには有名人がたくさんいるが、和菓子職人にはほとんどいない。もっと和菓子職人も前に出したい、と考えたことが背景にある。

さらに、近いエリアの鴨居の学童保育と通信制高校とのコラボレーションを意図し、子どもたちに和菓子を作る工程を見せたり、売り方を考えさせる「社長塾」を企画している。

「若者の和菓子離れは、今回の廃業報道でもかなり言われていました。子どもたちからは、めがね饅頭など変わったアイデアが結構出てくるんです。将来的には、彼らが作った商品も店舗に置こうと考えています。そうすることで、お孫さん世代にも和菓子の魅力が伝わる。子どもや若者の視点は、もっと必要だと思っています」と稲垣氏は語る。

匠紀の国屋の和菓子は、それぞれ工夫が凝らされている。最中にはもちが入っているし、あわ大福は粟の味がアクセントになる。こじゅうは、黒糖のカステラ生地で挟まれ味わい深い。あんこは素朴な味わいだが重くはない。

次ページ人間を動かす、商品の魅力やおいしさ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事