もう1つの最優秀賞作品はこちら。
年々、さまざまな分野にAIの導入が浸透しているが、中でも「採用領域」はAIの導入がとくに早かった。面接やエントリーシートの合否判定などがその代表例である。
それらを通して、これからAIを扱う人材をシステムに搭載されたAI自身が判定し、さらにそのAIによって合格し、入社したAI人材がさらに新しいAIサービスを生み出していくという循環が始まっていることを、風刺的に、そして見事に表現した作品である。AIと人間の立場が入れ替わっていく前兆が感じられ、「AIがAIに都合のよい人間を採用し始めたらどうなるのだろう」と、読み手の想像を大いに膨らませる作品になっている。
続いて優秀賞はこちら。
目をキラキラ輝かせて面接に臨む新卒の応募者に向かって、夢を聞く社員自身は夢など見失っており、死んだ魚の目をしていたという、なんともいえぬもの悲しさが感じられる作品だ。
作者によれば、自身の子どもの体験談を基にしているらしいが、後日談があり、子どもが入社してみたらその採用担当者はもう退職していたとのこと。この採用担当者自身の入社当時の夢は何だったのか、いつ夢が破れてしまったのか、はたまた夢など最初から持っていなかったのかと、いろいろと想像してしまう。
心の壁はもっと厚い?
ここからは、佳作に入選した作品をいくつか抜粋して紹介しよう。
対面での面接実施も徐々に復活する中で、以前の面接と唯一違うのが、学生の間に設置されているアクリル板である。確かに物理的な距離はコロナ禍前と変わらないかもしれないが、内定承諾にいたる心の壁はアクリル板の厚みよりもはるかに厚かったという様子を詠んだ作品である。
オンライン面接だけで選考している場合には、さらに深刻な課題となっている。体の距離と心の距離はいつの時代でも悩みの種であるが、この時代ならではの感性で鮮やかに表現されており、見事である。
コロナ禍以前であれば、内定を伝える際には、学生で固い握手を交わすことも多かったが、接触することすらご法度とされている今では、そんな光景は繰り広げられていない。いくつもの言葉を交わすよりも、たった1回のスキンシップやボディタッチが効果的なのに、残念な時代である。
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