政策保有株とは取引先との関係維持などを目的に、ある会社が別の会社の株を持つ、いわゆる会社同士の「お付き合い」で所持する株式のことをいう。日本企業の独特な慣行として、株式の持ち合いは普及してきた。
ただ昨今は、上場会社は保有の適否を詳細に開示することが求められるようになったことから、各社で保有銘柄の見直しが行われ、縮減する傾向が強まっている。前年の保有銘柄数が4万8134社だったのが、4万5198社に減少していた。
今回、東洋経済では全上場企業の個別企業ごとの保有銘柄について全数調査を実施。2022年7月末までに公表された2021年4月期から2022年3月期までの有価証券報告書を集計し、政策保有株式をどれだけ持っているかではなく、逆にどのくらいの企業に”持たれているか”という視点で上位300社のランキングを作成した。
なお、ホールディングス(持ち株会社)制度を採用する企業については、傘下の連結子会社が保有する銘柄数も開示している場合には、持ち株会社と連結子会社とを合計する形で政策保有銘柄数を集計している。また一部外国企業の保有分は集計に含んでいない。
3大メガバンクがトップ3に
今回、”持たれているか”という点に着目したのは、TOPIXなどの株価指数の算出方法の見直しの一部に影響するからだ。
具体的には、TOPIXなどの株価指数では、大株主や役員が保有する株式を除いた浮動株の価値(時価総額)で各銘柄の組み入れ比率を決めている。2022年4月から導入された浮動株の新しい算出方法では、新たに政策保有株についても浮動株から除くことになった。この変更に伴い、浮動株比率の低下を避けるために企業間で売却を働きかけることも想定され、縮減の流れがより高まる可能性があるからだ。
ランキングの上位をみていくと、減少傾向にあるとはいえ、たくさんの企業に保有されていることがわかる。1位は三菱UFJフィナンシャル・グループで、1176社と唯一1000社を超えている。2位のみずほフィナンシャルグループは999社、3位が三井住友フィナンシャルグループの775社で3大メガバンクがトップ3を占めた。
4位は三井住友トラスト・ホールディングス、5位はりそなホールディングスで上位5位までを銀行が独占した。銀行は融資業務などで密接な関わりを持つ企業が多いことから、業種の垣根を超えさまざまな企業から株式を保有されているものと思われる。上位5社の銀行業の会社で全政策保有株の8.5%弱を占めることから、売却がより一層進んだ際の株価への影響も注視していく必要がありそうだ。
以下、6位に第一生命ホールディングス、7位にMS&ADインシュアランスグループホールディングス、10位に東京海上ホールディングスと保険業が続き、8位に住友不動産、9位にイオン、とそれぞれ不動産業、小売業の大手企業が上位10位以内にランクインした。銀行業以外でも各業界の大手企業では、さまざまな企業と依然として取引関係(お付き合い)があるものと思われる。
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