労働になる「時間」、ならない「時間」の微妙な境目 制服の着替え時間は「労働」電車でのメール返信は

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職場の飲み会が労働時間に該当するかどうかは、昔から議論がされている論点ですが、働く人の多様化や、コロナ禍を経て、近年改めて注目されるようになりました。

教科書的には、飲み会は「強制参加であれば業務」とされていますが、何をもって「強制参加」なのかの基準自体は、どうしても不明確な部分が残ります。

この点、従来は、「強制参加とまで言えるかは微妙だが、断りにくいので参加する」という判断をしていた方も多かったのではないかと思います。

業務上の飲み会と業務外飲み会の線引き

しかし、現在においては、新型コロナウイルス感染が収束しない中、自分が望まない飲み会に感染リスクを負ってまで参加をすることは、「職場の協調性」という論理で考えても、その許容範囲を超えています。

また、共働きや男性の育児参加も当然の時代になっている中、とくに子どもが小さくて手がかかる時期、「職場の付き合いで飲みに行く」というような曖昧な理由で帰宅が遅くなると、夫婦関係の悪化につながることもあります。コロナ禍に加え、ワークライフバランスのことを考えても、位置付けのはっきりしない飲み会に無理をして参加する必要はありません。

仮に会社から「重要な接待なので必ず参加をしてほしい」ということを言われたら、それが業務命令であることを確認のうえ、労働時間として賃金の支払いを受けられるよう折衝しましょう。そして、明確に業務命令として参加を指示された飲み会以外は、自己の判断で断っても法的問題はありません。

業務であることが明確であれば、家族に対しても説明がしやすくなりますし、本人としても納得して飲み会に参加をすることができます。このように、ワークライフバランスなどの観点からも、業務上の飲み会と業務外飲み会の線引きは明確であるべきです。

なお、飲み会に強制参加だが、賃金の支払いがされていないという場合は未払い残業の問題となります。また、任意参加とされている飲み会に参加しなかったことで人事上の不利益を受けた場合は会社の人事権の濫用となります。このような状況に苦しんでいて、自身での解決が難しい場合は、労働基準監督署や、弁護士などの専門家に相談をしましょう。

ここまで各論を述べてきましたが、総括しますと、IT化、多様化の時代においては、何が労働時間に当たるのかをしっかり定義し、働く人1人ひとりが主体的にコントロールしなければ、プライベートの中に労働時間がどんどん入り込み、知らず知らずのうちに無償労働をしていたということにもなりかねません。

労使双方が、労働時間と、そうでない時間の線引きを明確にし、働きやすい職場環境を構築していきたいものです。

そうすることによって、働く人側のメリットだけでなく、会社にとっても労働トラブル防止や、従業員満足度の向上など、少なからずのメリットを享受できるはずです。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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