悪ガキ副区長が目指す「誰も来ない区役所」の真意 行政も民間も「悪ガキ型トップ」が常識を覆す

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日本では、いまだに大学や大学院を出ていないと、高度人材として認められません。いやいや、もうアメリカでは、MBAを取ったからといって、極端に高い社会的地位が得られるという時代は終わっています。親の価値観や、先達の価値観で今の若者を見てはダメなんですよ。

渋谷区は、悪ガキの街です。多くのストリートミュージック、ストリートスポーツは渋谷から生まれましたし、レコードショップ、楽器店、演劇、アパレルや外食産業にも渋谷発祥の企業がたくさんあります。

国内NO.1のスタートアップ集積エリアでもあります。若者たちは、世の中への不満から、こうしたほうがもっとよくなるのではないか、そのために自分はどんなことができるのか、日々、問いを立てているからです。このようなカルチャーが、街の強みでもあるのです。

渋谷区副区長がもたらした「創造と破壊」

高度成長期は、こうすれば売上が上がるという明確な答えがあり、「よし飲みに行くぞ!」「〇〇くん、目標達成!」などとやっていて、声が大きく、体育会系で、「俺について来い!」という元気のある人がリーダーの象徴でした。

でも今は違います。リーダーのやるべきことの1つは、本書にも書かれていますが、創造と破壊です。組織カルチャーの変革のためには、誰が見ても圧倒されるようなビジョンと、「あるべき姿」を見せることが必要なのです。

渋谷区新庁舎のプロジェクトを任されたとき、僕がまず立ち上げたコンセプトは、「誰も来ない新庁舎をつくる」ということでした。当然、「何を言ってるんですか?」となりますよ。

普通は、新庁舎を建てるとなれば、「ここにお客様をお通しして、ここは待合にしよう」というように考えますよね。でも、僕が目指したのはそんなことではありません。

役所って、人を集めてはダメなんです。だって、誰も役所になんか行きたくありませんよ。なにかの手続きをするのに、わざわざ出かけなければならないし、場合によっては、会社に「住民票を取りに行くので、出社が遅れます」なんて連絡しなければなりません。

それが困るから、会社の帰りに寄ろうと思ったら、役所はなんと17時半までしか受け付けてくれない。土日は休み。納税しているのに、こんなのサービスじゃありませんよ。役所の都合を、納税者に押しつける嫌がらせです。

これじゃいけない。自治体は、ある意味で「強制的」に税を徴収しています。それなら、誰もが満足するサービスを提供する義務があります。地域やお客様の課題を解決するプロフェッショナリズムを貫かなければなりません。

僕は、「区民」ではなく「お客様」と言います。口に出して「お客様」と言っていると、お客様志向になっていきます。最初は、みんな違和感があるようでしたが、今では職員全員が「お客様」と言うようになりました。組織カルチャーにしたわけです。

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