悪ガキ副区長が目指す「誰も来ない区役所」の真意 行政も民間も「悪ガキ型トップ」が常識を覆す
政治も行政も民間も、リーダーには、厳格と寛容を高次元で両立する力が求められます。厳しく言うだけの人や、やさしいだけの人はたくさんいますが、両方をうまくコントロールする能力が重要ということですね。
また、物事をつねにフラットに見る力も必要です。壁をつくらないということです。日本の組織は縦割りですから、すぐに壁をつくり、上下をつくりたがります。しかし、部長だろうが、今年入った新人だろうが、1つのプロジェクトを成功させるために上下は関係ありません。
人は、良い部分を見なければいけません。Aさんの良い部分、Bさんの良い部分を掛け合わせる。それが多様性です。
ただ、ここが難しいところです。よく、政治家のことを「先生」と呼ぶ人がいますよね。そこにすでに上下がつくられているのです。人間、朝から晩まで「先生」と呼ばれ続けていれば、勘違いもしてしまうでしょう。僕がよく知る政治家は、「私は先生なんかじゃない。名前で呼んでください」と言いますよ。
僕は、新人でも2年目、3年目の若者でも、壁や上下を作らず、敬意を払って「TikTokってどんな感じなの? 教えてよ」と話しかけます。そして、「解」よりも「問い」をつくるように心がけています。
誰にも負けない好奇心もありますね。誰に対してもインタビューしたいという気持ちがあるんです。会議中でも、「昨日の休みはどうしてました?」「お子さんおいくつ?」など質問して、そこからコミュニケーションが円滑になっていったりもします。
そして、どんな話題でも、雑談力で会議を盛り上げるようにしています。本書にも書かれていますが、ある種の幼稚性を出すということですね。「あの人かわいい」と言われるような、かわいげ。
それから、笑いをつくり出せるウイットです。ときにはお茶目なことを言うというのは、大人がやればやるほどかっこいいんですよ。
壁をつくらず、上下をつくらない。僕のことを副区長だなんて思わなくてもいいんです。これが、僕の考える悪ガキです。
お茶目なビジネスパーソンにできたDX
渋谷区では、現在、LINEとウェブサイト上のAIチャットボットが24時間稼働しており、年間7万件のお客様の問い合わせに対応しています。
電話での問い合わせも、3割以上はコールセンターで解決していますから、職員の仕事中に電話が鳴るということはなくなりました。僕のいるフロアで電話している人を見かけることは、ほとんどありません。
今後は、職員のスマホですべての業務データが見られるようにもなります。全職員とダイレクトにコミュニケーションがとれて、プロジェクトの進捗状況を瞬間的に共有できるのです。
ただ、こういったことは、なにも僕が特別だったからできたわけではありません。平均的なビジネスパーソンの皆さんにできます。だって僕は、起業したことも社長をやったこともない、平均的なビジネスパーソンですからね。まあ、ちょっとお茶目ではあるかな(笑)。
ビル・ゲイツも、ジェフ・ベゾスも、マーク・ザッカーバーグも、サービスを開発する前は、みんなから「バカじゃないか」と思われていたでしょう。でも、彼らは個人の中で圧倒的なビジョンを見ていた。とてもクレイジーで、究極の悪ガキだと思います。
日本人は、本書に登場する「悪ガキ」と言われる人たちを、すべて叩いて排除してきました。政府にもメディアにも変革に対するリテラシーが不足気味です。だから、注目されるWEB3.0系のスタートアップは、シンガポールなど海外に続々と移転しています。
『世界は悪ガキを求めている』には、まさにこういった内容が散りばめられています。本書は、単なる「悪ガキの話」ではありません。「人材」というテーマで書かれていますが、これは、社会の仕組みや構造、カルチャーの話なのです。
(構成:泉美木蘭)
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