会社を辞め、カレー屋開き「15年」続けられた理由 人気が出ても「店は増やすことは考えていない」

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脱サラ後、東京・新宿にスパイスカレー店「草枕」を開業した馬屋原亨史さん(撮影:今井康一)
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参入しやすいものの、生き残りは厳しい飲食業。日本政策金融公庫総合研究所が発表している「新規開業パネル調査」でも、「飲食店、宿泊業」は業種別で最多の廃業率となっている。それゆえ「脱サラして飲食」という選択は安易に薦められないものの、中には夢をかなえ、自分の店を守り続けている人もいる。

そこで「脱会社員の選択」連載第7回は脱サラ後、東京・新宿にスパイスカレー店を開業し、15年になる馬屋原亨史さん(44)に、安定した生活を手放して趣味だったカレー作りを仕事にしたきっかけや、店を続けていく難しさ、さらには人が集う場を作れた喜びなどについて聞いた。

スパイスカレーの奥深さに魅せられて

馬屋原さんがカレーに目覚めたのは、北海道大学での寮生活時代。入寮した「恵迪(けいてき)寮」は、全国でも数少ない自治寮として知られる。寮では部屋ごとに趣旨を掲げて活動する伝統があり、その中でカレーを追求する部屋もあった。

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馬屋原さんは仲間らと自炊生活を送る中で、ルーを使わず、スパイスを配合して作るカレーの奥深さに触れ、店を食べ歩いては研究を尽くした。

「本当においしいものって、脳みそにくるんです。スパイスの配合、スープの取り方ひとつで味がガラッと変わるので、狙った味ができたときの面白さがたまらなかった」

ついには「カレー部」なるものの部長に就任し、毎日作り、食べすぎて、身体を壊したこともある。それでもとにかく夢中で、ひたすら楽しく、中東へ3カ月、貧乏旅行もしてスパイス料理の奥深さにのめり込んだ。

しかし、カレーはあくまで趣味。工学部を卒業したあとは制御・計測機器メーカーに就職し、北海道を離れた。会社は、育児と両立して働く女性社員もいるなど長く働ける環境。待遇も十分で、不満はなかった。

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