パナソニックが挑む、新"丸ごと"戦略の中身 車載、住宅に次ぐ売上高10兆円への重点分野
同事業の強みは、製品力やラインナップはもとより、スーパーマーケットやコンビニエンスストアといった販路にある。本間氏は過去、東洋経済の取材に対し「(コールドチェーンの販路の)食品流通はパナソニックには力がなかった分野。三洋を買収したことで、日本中のスーパーマーケットやクイックサービスレストランが顧客になった」と話し、その活用に向けた意気込みを語っていた。
新たに設立する新販社では、この三洋系の販路にもともとのパナソニックの販路を統合。省エネ性能が高いコールドチェーンの新商材に加え、照明や監視カメラ、業務用の空調や電子レンジ、広告用ディスプレイなど、パナソニックの製品を幅広く売り込む。他部門の商材も合わせ、コールドチェーン事業は2018年度に2014年度見込み比で約7割増となる売上高3000億円目標を掲げる。
かつての「丸ごと」戦略との違い
一顧客に対し、パナソニックの商材を幅広く提供するこうした戦略は、かつて大坪文雄社長(当時)が"まるごと"戦略と称していた、住宅向けの家電などをパナソニック商品でそろえる戦略に近い。ただ、今のパナソニックでは「まるごと」という言葉は聞かれない。あくまで"ソリューション"と位置づける。
顧客の悩みをパナソニックの商材やサービスで解決する。その顧客開拓のネットワークは、従来のパナソニックだけでなく、旧三洋や旧パナソニック電工といった買収先の販路を積極的に活用する――。これが、パナソニックが狙う法人向けソリューションの中心となる戦略だ。
法人向けソリューションの目線は海外にも及ぶ。1月中旬、米ニューヨーク市で開かれた小売業界向けの大規模展示会「リテール・ビックショー」。パナソニックは同展示会で、法人向けの堅牢タブレットや陳列するだけで在庫管理ができる次世代商品棚、1台で店内をまるごと見渡せる独自の監視カメラなどを大々的に展示。「セキュリティからマーケティングまで、ソリューションの幅を広げていく」(現地担当者)と、米国での法人向けソリューション事業拡充に取り組んでいる。
ただし課題もある。すべてをパナソニックでそろえたくないという顧客もいるだろう。ソリューションという名の下、顧客のニーズを軽視して無理に自社商材でそろえようとすれば、意図せぬ顧客離れを招く可能性もある。
また、商品やサービスをいくら一括提供するといっても、単品での製品力や価格競争力があるのが前提。津賀社長も年頭の記者との懇談会で、法人向けソリューション事業の課題について、「正念場なのはセキュリティの分野」と語り、「監視カメラは国内でのシェアは高いが、海外では価格競争になかなか追随できない。ソリューションベースのセキュリティ分野をどう伸ばすかは課題だ」と言及していた。
新販社設立で、本格的な拡充を狙う法人向けソリューション事業。車載や住宅に次ぐBtoBシフトの柱は、これからが正念場だ。
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