3つめの悪風習は、「若手に『古い価値観』を押しつけてくる」ことである。
コミュニケーションは「伝達」ではなく「伝わる」こと
企業経営において「『共同体』という概念」は重要だと私は思っている。
共通の目的の下、多様な人々が集まり、時に協働し、大きな価値を生み出していく。連帯意識や仲間意識が生まれれば、そこから共同体意識が芽生えてくる。
しかし日本企業の多くは、「昭和」という時代を引きずったままの「古い共同体意識」「古い価値観」がそのまま残っている。
「集団主義的」「全体主義的」な感覚が色濃く残り「同質性」「画一性」が尊ばれる前近代的な共同体の古いしきたりや窮屈さに、若い世代は辟易としている。
若い人たちは共同体そのものを嫌っているわけではない。訳のわからない旧態依然とした封建的な「村」意識が、彼らには到底理解できないのだ。
「組織風土の変革」とは、「過去の組織風土」に戻ることではない。時代と大きくずれてしまった「古い共同体」をぶち壊し、「新たな感覚の共同体」を創造することにほかならない。「古い価値観」を引きずったままの「旧来の共同体」は、そのまま滅びる運命にある。
「組織風土」が劣化する過程においては、「組織内のコミュニケーション」が決定的に不足する。上からは「指示」「命令」といった「上意下達のコミュニケーション」だけが行われ、下からは何も言えなくなる。
確認したいことがあっても、ものが言えない空気が漂っているので、下は右往左往し、疑心暗鬼が生まれる。コミュニケーション不足が原因で上が求めていたように物事が進まなければ、上から叱責され、ますます何も言えなくなってしまう。まさに「組織的コミュニケーション障害」が発生しているのだ。
コミュニケーションの語源はラテン語の「コムニカチオ」(communicatio)だ。その本来の意味は「分かち合うこと」「共有すること」である。一方通行的な「伝達」は、コミュニケーションではない。
上の人間は、下に「伝わっていない」のに、「伝えたつもり」でいる。そして、下は伝わっていないのに、それを言えないし、言わない。そんな状況を放置しておいて、意思疎通ができるはずもない。
コミュニケーションとは「伝える」ではなく「伝わる」であることを理解しなければ、「組織風土の劣化」は止められない。
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