健康診断「空腹時血糖値が正常」でも安心できぬ訳 血圧、コレステロール、血糖値の数値の正しい見方

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次にコレステロールはというと、血管の内側にできる“火山”のマグマの部分に当たるのがコレステロールです。コレステロール(=マグマ)が増えれば、火山の不安定性が高まるので噴火しやすくなります。ですから、コレステロールのコントロールはやっぱり大事です。

ここで、コレステロールについて改めて簡単に説明をしておきましょう。コレステロールは脂質の1つで、いわゆる油なので、水分である血液とはなじみません。そのため、血液のなかを運ばれるときには、水となじみのよい「リポたんぱく」という“船”に乗って運ばれます。それが、「LDL(低比重リポたんぱく)」であり「HDL(高比重リポたんぱく)」です。

LDLに乗って運ばれるコレステロールが「LDLコレステロール」で、肝臓でつくられたコレステロールを全身に運ぶ役割をもっています。ところが、これが増えすぎると、血管の内側の壁に入りこんで動脈硬化の原因になってしまう。それが「悪玉コレステロール」と呼ばれる理由です。

HDLは血管の壁にたまった余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割をもっています。つまり、動脈硬化を抑える働きをしてくれるので、HDLに乗って運ばれるコレステロール(HDLコレステロール)は、「善玉コレステロール」と呼ばれます。

もう1つ、健康診断で必ず測定されるのが「総コレステロール値」です。これは、血中に含まれるコレステロールの総量を表し、LDLコレステロールとHDLコレステロール、そして中性脂肪に含まれるコレステロールの合計になります(単純な足し算ではないですが)。

そして、悪玉である「LDLコレステロール値が140㎎/dl(デシリットル)以上」、善玉の「HDL コレステロール値が40㎎/dl未満」、「中性脂肪(トリグリセライド)が150㎎/dl以上」のいずれかに該当すると、「脂質異常症」と診断されます。

コレステロール値と心血管病のリスクとの関係

コレステロール値と心血管病のリスクとの関係については、次のようなことがわかっています。

・総コレステロール値が38.7㎎/dl上昇すると、冠動脈疾患リスクが男性で24%、女性は20%上がる(出所:Atherosclerosis. 2016 May;248:123-31.)
・LDLコレステロール値を38.7㎎/dl下げると、心筋梗塞の発症や心筋梗塞にかかわる死亡のリスクを23%下げられる(出所:JAMA. 2016 Sep 27;316(12):1289-97.)

また、LDLコレステロール値のおもしろいところは、下げれば下げるほど、リスクが下がること。「The lower, the better」と言われ、低ければ低いほどよいのです。

血圧も血糖値も低すぎると、低血圧、低血糖になり、よくありません。ところが、LDLコレステロール値の場合、どこまででも下げれば下げるほどリスクが下がることがわかっています。基準値内であっても、例えば140よりも100のほうが、100よりも80のほうが、80よりも60のほうが、心血管病などを起こすリスクは下がるのです。

そのため、一度心筋梗塞を起こして再発予防が大切な患者さんなどの場合には、薬も使ってかなりしっかり下げます。

次ページでは全員が薬を使って下げたほうがいい?
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