健康診断「空腹時血糖値が正常」でも安心できぬ訳 血圧、コレステロール、血糖値の数値の正しい見方

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次のグラフは、HbA1cのレベル別に、脳梗塞と虚血性心疾患(心筋梗塞と狭心症)の発症リスクを見たものです。どちらもHbA1cが上がるにつれて、階段状にリスクが上がっています。

HbA1cが5.0%以下の人に比べて、糖尿病と診断される6.5%以上の人のリスクが高いのはもちろんですが、「糖尿病にまでは至らない“やや高め”の5.5~6.4%の人たちも脳梗塞のリスクは5.0%以下の人と比べて3.6倍、虚血性心疾患のリスクは2.1倍(これは統計学的に差を証明できていませんが、その傾向は見受けられます)と、高いのです。

「糖尿病と診断されたら気をつけよう」では遅い、ということです。

一方、空腹時血糖値は、健康診断で必ず測定される項目ですが、これだけをチェックしていてもリスクが見逃される可能性があります。

空腹時血糖値が正常でも、食後には毎回上がる人がいる

下の「DECODA study」と書かれたグラフを見てください。

これは日本人を含めたアジア系住民のデータをもとに、空腹時血糖値、糖負荷試験(OGTT)2時間後の血糖値のレベルと、心血管死のリスクを比べたものです。

糖負荷試験とは、これも糖尿病の診断方法のひとつで、75gのブドウ糖が溶けたサイダー水をごくごく飲んで、2時間後の血糖値を測るというもの。甘い飲料を飲むとバーンと血糖値が上がります。それがスムーズに下がってくるかどうかを調べるのです。

空腹時血糖値が正常でも、実は食後には毎回血糖値が上がっている人がいます。「食後高血糖」や「血糖値スパイク」と呼ばれる状態です。糖負荷試験は、この食後高血糖(血糖値スパイク)があるかを調べる検査です。

グラフの話に戻ると、空腹時血糖値のほうは110㎎/dl以上、126㎎/dl以上と上がっても、心血管死のリスクは増えていません。糖尿病と診断されるほど空腹時血糖値が高くても、心筋梗塞などになるリスクは、109㎎/dl以下の人たちとほぼ変わりませんでした。

一方、糖負荷試験2時間後の血糖値で比べると、階段状にリスクが上がっていました。つまり、食後高血糖を起こす人は、たとえ糖尿病の段階ではなくても、すでにリスクが高いということです。

次ページもう1つの研究結果を見てみると…
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