まず、制裁実施国が限定的なことです。日本国内の報道だけをみていると、アメリカをリーダーとして、正義の名の下に世界中の国がロシアに制裁を課しているように感じますが、制裁実施国は40カ国程度(EU27カ国含む)にとどまっています。
これに対し、中立、もしくは、実質的に支援している国は意外なほど多くあります。中国やインド、ブラジル、南アフリカなどの「BRICS諸国」がその代表です。
ロシアの主要輸出産品である原油・ガスは、欧米諸国が輸入禁止しても、それを欲しがる国はたくさんあります。資源・エネルギーが乏しい中国はその筆頭です。制裁に協力しない国はけしからん、といった論調もありますが、これが国際政治の実態です。
それ以上に大きな原因は、制裁の中身です。要するに「どこまで本気か」ということです。
そのひとつの例が、ロシアの「SWIFT」からの締め出しです。「SWIFT」とは「国際銀行間通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)」と呼ばれる国際的なドル送金システムで、そこから締め出されると、国際的なドルのやりとりができなくなり、ビジネスだけでなく、国家運営にも大きな支障が生じます。
世界の金融覇権を握るアメリカが実質的に管理するシステムで、制裁対象国を破綻に追い込むこともできる「金融分野の最終兵器」です。アメリカは、侵攻開始直後に、ロシア金融機関のSWIFTからの締め出しを決定しました。
筆者は、これを聞いた瞬間、「そこまでやるのか」とアメリカの決意に驚きましたが、実際には、対象となる金融機関が限定的で、その効果は軽微なものにとどまっています。欧州諸国の原油・ガス輸入禁止措置も同様で、本気でやったら、欧州諸国側が立ち行かなくなります。
結局、制裁のメニューは多いものの、グローバルに絡み合った経済情勢の中で、制裁を強化すればするほど、制裁をする国も「返り血」を浴びてしまう為、制裁は、抜け道が多く、効果の低いものにならざるをえない、ということが改めて明らかになりました。
中国がウクライナ情勢から学んだこと
では、ここで、ウクライナ情勢に関連して取り上げられる「中国の台湾侵攻」について考えてみましょう。中国は、今回のロシア・ウクライナ紛争から何を一番学んでいるのでしょうか。軍事的な教訓は数多くあると思いますが、筆者は、これまでみてきた「西側諸国の経済制裁効果」ではないかと考えています。
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