日本と大きく異なるインドの労働法、雇用時には契約締結を--琴浦 諒弁護士にインタビュー
拡大する日本企業のインド進出。法的課題への解決ニーズも急増し、弁護士への要求も複雑化、高度化してきている。そこで今回は、インドを専門分野の1つとして活躍する、数少ない日本人弁護士の1人であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所の琴浦 諒氏に「インドに進出する日本企業のための人事労務上の注意点、法律上の課題」などについてインタビューした。
聞き手はインド進出支援コンサルティングなどを手掛けるネクストマーケット・リサーチ代表取締役の須貝信一氏。
--今日はよろしくお願いします。かなりお忙しいと思いますがいかがですか?
おかげさまでありがたいことに、どんどん忙しくなってきています。昨年から今年にかけて、5カ月連続でインドに出張しています。
■裁判に10年かけても平気
--さて今日は、インド現地で組織を立ち上げ、運営していくうえで気をつけるべき点について、お伺いしたいと思います。
まずこれから雇う人がどんな人なのかを認識する必要があります。インドの労働法の特徴的なこととして挙げられるのが、被雇用者(employee)が、「workman」(労働者)と「non-workman」(経営者・管理職)という2つのカテゴリーに分けられていることです。労働者の定義をブルーカラーとホワイトカラーに分けているようなものです。
これは他の国と比較しても、かなり変わっていると思います。もしかしたら、職能制度としてのカースト制度の名残があるのかもしれません。雇用しようとする人がworkmanに当たるかnon-workmanに当たるかにより、適用される法律や保護の内容等がかなり変わってきますので、そのあたりの認識が必要だと思います。workmanの場合は、法令上の解雇規制があるため、解雇での訴訟が起きやすくなります。
--よくある解雇訴訟だと請求額が数十万円なのに、10年も裁判やっているようなことがありますよね。あれは本当に時間の浪費ですね。
時間に対する感覚が日本人と全然違うんだと思います。インド人は長い裁判でも日本人ほど苦痛に感じないようですね。