中東・北アフリカ革命は連鎖するか--安易に“ドミノ”と騒ぐべきではない《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》


 いくらソーシャルメディアや携帯電話でデモや集会がスムーズにできるようになっても(5)つまり表現や集会の自由の蓄積がなければ、いきなり効果的な運動は展開できない。チュニジアでは表現・集会の自由は厳しく制限されていたといわれるが、インターネット人口は全人口の34%を超えアフリカでは最高レベルの普及率であった。フェイスブック利用者も人口の15%を超えていたといわれる。エジプトは表現・集会の自由が認めらていた。ヒューマンライツウォッチの最新リポートによれば、リビアも過去に比べ表現および集会の自由が改善されていたという。

(6)すでに社会の中に組織化された反政府市民が存在し、彼らの受け皿になっている野党の存在の有無は政権の存続を大きく左右する。エジプトにはれっきとした野党があり、チュニジアにも脆弱ではあったが、民主社会運動、人民統一党等の野党があった。政党が存在しないリビアでも、リビア国民連盟、カダフィ大佐打倒を目的とするリビア救国国民戦線のような反政府組織が存在していた。

(7)は警察や治安部隊の士気の高さやその根拠がデモの鎮圧の成否を分けるということだ。根拠としては、政権と同じ民族で、経済的・政治的に優遇されていることが重要になる。経済的にも優遇されていなかったチュニジアの治安部隊の士気が低く、最後は同士討ちを演じていた。莫大な軍事支出を誇るエジプトでは治安部隊はチュニジアよりはるかに経済的に優遇されてきたが、最後の段階で民衆に同情する者が相次いだ。リビアの治安部隊の一部はカネで雇われたアフリカ傭兵部隊である。

(8)の人口1人当たりの石油収入は「安定をお金で買える余力」である。政変につながっている国々は原油生産量でトップ15位に入っておらず、大産油国とはいえないクラスの国々であり、財政余力は大きくはなかった。

さて、湾岸産油国やイランや中国にどれほど当てはまるだろうか? 次回じっくり見てみよう。

たむら・こうたろう
米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェロー。前参議院議員(民主党)

※photo:the President of the Russian Federation Presidential Press and Information Office CC BY 3.0
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