中東・北アフリカ革命は連鎖するか--安易に“ドミノ”と騒ぐべきではない《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》

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 つまり、何としてでも新たな「革命」をブロックする強い動機と意志を持っている組織がある。ここが「チュニジアやエジプトやリビアとの違い」とこの記者は念を押す。

説得力があったのは「イランには安定を買うだけの財産がある」というくだり。イランの石油収入はエジプトよりはるかに大きい。不満を持った階層や地域に交付金や生活必需品を配っているとのこと。ガス抜き対策もぬかりがない。

続いて、イランの指導者層が一つのファミリーによる独裁ではない点を強調。
 
 「そこがアハマディネジャド(イラン)の、ムバラク(エジプト)やカダフィ(リビア)やベンアリ(チュニジア)との違い。政治権力は適度に分散している」

よって「エジプトやチュニジアやリビアのように、権力が一極集中していた政治ファミリーが追放される国々は、次の選択肢が育っておらず、追放後は無政府状態に近くなってしまうだろう。この無政府状態は、軍と弱い野党の連合で緩やかな軍事独裁に回帰する可能性が高い。熱狂で始まった“革命騒ぎ”が軍事独裁に回帰してしまえば今の中東・北アフリカに広がる熱狂も違ったものになるのではなかろうか?」という。

記者のあまりに冷静な分析に、会場は静まり返った。「一人の独裁者が倒れると周辺国もドミノ倒しのように倒れると騒ぐけど、そうはならない。細かい違いを見なければ」と最後に結ぶ。

政変につながる条件

イランのパスポートを持っている彼女の分析で、なるほどと思ったのは「イランの民衆は公平な選挙は求めるが政治の不安定化は求めない。1979年のイラン革命時の政治の混乱で、自分たちがいかに苦労したかを知っている。だから大統領を引きずり降ろして、政治的混乱まで引き起こそうとは思っていない」というもの。
 
 そもそもイランのデモが「政変」までを求めていないとしたら、「イランへの革命の伝染」を騒ぐこと自体がおかしいのだ。

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