改めて説明しますと、まずは、時間をかけて塩を加工する。長い時間をかけて煮込んだ料理がどうやっても美味しくなるように、時間こそは塩と並ぶ貴重な調味料なんである。で、その「塩と時間」でこしらえた美味しい加工品を使って料理をするから、たちまちインスタントに味が決まる。ゆえに、わが日々の料理は一瞬で出来上がってしまうのだ。
ってことは、私にとっては「梅酢」と「味噌」が「つくおき(作り置き)料理」と言ってもいいのではないだろうか。
今はやりのつくおきは、週末ぶっ潰してタッパーいっぱいの料理を冷蔵庫にぎっしり入れるやり方が主流なようですが、わがつくおきは年に一度、それぞれ数時間の作業をするのみである。保存は常温で電気も冷蔵庫も必要なし。
しかも一週間で食べきらなきゃならんということもなく、半永久的に持つ。展開のバリエーションも無限。そう考えれば、このイナガキ流「つくおき」の圧倒的勝利! と、一人ほくそ笑む日々である。
え、そんな単純な調味料ばっかりだと飽きるんじゃないかって? いやいやここまで調味料をシンプルにしていくと、いわゆる「素材の味」ってものが前面に出てくるんですよこれが。調味料がうますぎると、素材のほのかな味、すなわち豆腐の甘みとか大根の辛味なんぞ、サーっと後方に引いていってしまいますからね。
でも塩だけとなれば、同じ大根でも季節やモノによって味が全然違うじゃんなんてことも急にわかるわけですよ。なのでちっとも飽きないし、むしろ毎回「ほお、今日の大根超甘いじゃん」「今日のはちとカラいね」などとわくわくする。自然のものは同じ味など一つもなし。
なので全然「同じ味で飽きる」なんてことはない。同じ味で飽きちゃうのは案外、調味料の味に頼りすぎてるからなんじゃないでしょうか。
調味料は「似たもので代用可能」
あと、もう一つ気づいたことはですね、すべては「似たもので代用可能」なんだということだ。
思い返せばバルサミコ酢を捨てる時。それは悲しかった。あの濃厚な甘みのある酢が味わえない日々の味気なさを想像するだけでガックリきた。でも嘆いていても仕方がないので考え方を切り替えました。
バルサミコ酢も「酢」の一種なんだから、酢で代用すればいいじゃん……と。でもさすがに米酢とバルサミコ酢はどう考えても違う味としか思えず、最初はバルサミコ風に色の濃い「酒粕酢」を買って「案外味が似てる」と思い込もうとしていたんだが、ある日冷静になって味わってみたらたいして似てない。っていうか正直全然違った(笑)。
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