
ミカンの皮もベランダのザルでカラカラに乾かし、このようにすり鉢に入れ……(写真:筆者提供)
疫病、災害、老後……。これほど便利で豊かな時代なのに、なぜだか未来は不安でいっぱい。そんな中、50歳で早期退職し、コロナ禍で講演収入がほぼゼロとなっても、楽しく我慢なしの「買わない生活」をしているという稲垣えみ子氏。不安の時代の最強のライフスタイルを実践する筆者の徒然日記、連載第5回をお届けします。
「食費を浮かす」など小さなこと
さて、ここまで連載をお読みいただいた奇特な方々には、東京のごときコンクリートジャングルであっても野草採取でちょいちょい「食っていく」ことは十分可能ということが少しはわかっていただけたのではなかろうか。
前回は実践にあたっての注意事項もお伝えしたので、「面白そう」と思われたら一度でいいのでぜひ、この合法的無銭飲食体験に挑戦してほしい。
……いや実を言えば、あまりお勧めしたくない気持ちもあったんですよね。
だってもしライバルが増えちゃって、これまでだーれも見向きもしなかったわが近所の公園のヨモギが虎視眈々と狙われる日が来ちゃったら、私の人生のささやかな楽しみがあえなく奪われてしまうんじゃ……なーんてケチなことを多少は考えたわけであります。
でも一晩悩んで考えた結果、やはり、この体験はそのような狭い了見でもって独り占めしてはいけないという結論に至ったのだ。
その理由は、やってみればわかる。
そこらの野草を採って食べるという体験は、ただ食費を浮かすとかそういう小さなことにとどまるものではない。一度その体験をしてしまったら、そのささやかな行動は小さな種となって自分の奥底に止まり、次第にムクムクと成長して人生そのものを根底から覆えす可能性を秘めているのだ。
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