とものりに聞かれ、サイトでお相手探しをするのはアプリと同様であること。そこで申し込みをかけたり、かけられたりして、マッチングが成立したら、お見合いとなること。見合い後、お互いが“交際希望”を出せば仮交際へと進むこと。そして、結婚相談所の交際には、“仮交際”と“真剣交際”の区分があることも説明した。
「仮交際は、複数の方とお付き合いをしていいし、ほかのお相手とお見合いをしてもいいんですよ。ここはいわば、お相手の人柄を知る期間。そのなかで、“この方とは、結婚を前提にお付き合いがしたい”と双方が思ったら真剣交際に進みます。そのときは、ほかに交際している相手がいたらお断りを入れますし、ほかのお見合いもできなくなります」
とものりは、熱心にメモをとりながら私の話を聞いた。そして、面談を終えると、「即決できないので考えてもいいですか。入会するかどうかは後日お返事します」と言って帰っていった。
すると数日後、とものりの母を名乗る女性から、電話がかかってきた。
相談所の常識は世間の非常識と憤慨
「先日、息子が入会面談に伺ったようですが、あなたから説明された結婚相談所での婚活の仕方を聞いて、私はびっくりしてしまいました」
あきらかに電話の声が憤慨していた。
「複数の人と仮交際してよいというのは、二股、三股を奨励してるんですか? これは、通常の恋愛であれば相手が激怒する行為ですよね。何人かキープして、そのなかで順位をつけて、一番いい人と付き合う。そういう行為が許されていること自体がおかしいのではないですか。結婚相談所の常識は、世間の非常識なんですね。あきれました」
人それぞれに考え方があるので、私は反論しなかった。
その昔、見合い写真を交換すれば、それで結婚が決まってしまう時代もあった。その頃は、あてがわれた相手と結婚することに何の疑問も抱かなかった。しかし、SNSがこれだけ発達し、いくらでも人と出会える現代は、結婚相手に相性や恋愛感情や生活していく価値観の一致を求めている。
お見合いは、出会いのきっかけにすぎない。それまでまったく知らなかった他人同士がお見合いで出会い、1時間程度の会話を交わし、好感触を得たら仮交際に入る。その時点では人柄はわかっていないし、恋愛感情も育っていない。デートを重ねていかなければ、結婚できる相手かどうかもわからないのだ。二股、三股というのは、恋愛感情のある相手を裏切って、複数の異性と並行して付き合うことをいうのだ。
母親に反対されたのだろう。結局、とものりは入会しなかった。
会員のようこ(41歳、仮名)に、懇意にしている仲人の会員である、たかし(51歳、仮名)から申し込みがかかった。ようこは、語学が堪能で外資系で働く年収1000万円を超えるバリキャリだ。しかし、女性はプロフィールに年収を明記するのが任意なので、数字は入れていなかった。
申し込みの後に、仲人から直々に連絡がきた。
「なんとかお見合いできるように、女性に推薦してくれませんか?」
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