元声優32歳彼が「マルチにハマった」同情の経緯 芝居に集中したい想いが400万円の借金を生む

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こうして到来した本格的なQLC。一口にマルチといっても完全に法的にアウトな詐欺から、コンプラや倫理的にグレーなものまでさまざまだが、古川さんはなかなかの泥沼にハマってしまったようだ。現在も当時の借金が残っているという。

「最初に関わった組織は真っ黒で、絶対にいけると思い込んで100万円を突っ込んだ後に内部事情を知り、すぐ抜けたんですが、そういう会に1回参加するとリストが回って誘いが次々と来るようになって……。

当初はやりたいことに集中するために少し視野を広げようと思って参加したんですが、半年ほどバイトもせず収入ゼロの状態で活動に入れ込んでいた期間があり、そこで一気に借金が膨れ上がりました。交流会の知人に紹介してもらった団体に債務整理を頼んだら、なぜかさらに借金が100万円増やされ、そのまま逃げられたこともあります」

声優仕事が軌道に乗り始めた時期もあったが…

その一方、地道に交流会でアニメ業界の人脈を広げていた甲斐もあり、とある事務所のオーディションに合格することができた。

「入所してすぐにアニメのガヤや、アプリゲームの仕事を振ってくれたんです。ガヤは役名のない仕事で、アニメを知らない人からすると大したことのないように思えるかもしれないんですが、声優的にはスゴいことで『なんなんだ、この事務所は!?』って思っていましたね」

紆余曲折を経て、駆け出し声優として着実に歩み始めたように思えた古川さん。しかし、マルチに傾倒していた過去の噂が事務所内で広まってしまい、仕事が激減することになる。

マルチで借金まみれになった人生経験を語れる声優なんて、考えようによってはルックス以上に強い武器になりそう……というのは外野にいる筆者のイチ感想だが、SNSなどでも露骨な嫌がらせを受け、声優人生を続ける気力も遂に尽きたらしい。

「そもそも一度は、湖を訪れた20歳で人生終わったもんだと思って生きてきたので、20代の生活に後悔はありません」とのことで、3年ほど籍を置いた事務所を辞めた現在は、派遣社員としてIT企業で働いているという。

「事務所を辞めると決めた頃、事務所でお世話になっていたとある大御所声優さんに、『人のためと言っても、それは結果論。まずは自分が声優として将来、どんな演技や役をやりたいか、そのために何をすべきかが見えていないと、そもそもこの業界で生きていくのは難しい』と言われ、その言葉はグサッと刺さりました。

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