また、昨今は演技力に限らず、ルックスや歌唱力なども重視される傾向にある。自身の演技力にはそれなりに自信のあった古川さんだったが、実際のところは、オーディションに挑戦する機会にすら恵まれなかったという。
「タレント養成学校や声優養成所の経験もあり、周りと比較して自分に実力の有無で言えば別になくはないだろうと思っていました。実際、僕の演技を評価してくれるマネージャーも中にはいたんですが、どうしてもルックス重視で仕事を斡旋する傾向があり、モヤモヤしていましたね。当時はギラギラしていたので、いつか自分も……と思っていました」
インタビュー中、古川さんは、芝居混じりで筆者に答える瞬間(前述の聖地の湖の話など)が多々あった。筆者は演技方面のことは詳しくないが、個人的にはとても達者に思えるし、”憑依型”と周りに評されるのも納得だ。それでいて声はとてもきれいだし、本人が間接的に自嘲するそのルックスも、文化的な女性が好みそうな雰囲気でもある。
しかし、現実は筆者が想像する以上に厳しいものだったようだ。
将来を模索中、マルチにハマって借金400万円
結局その声優事務所を1年ほどで辞め、その後はフリーで3年ほど活動したという。
「バイト先は15カ所くらい転々としていました。自分で舞台を探して役者として稽古などもしていましたが、なかなか事情を理解してもらえず、『そんな長期で休むなら辞めてくれ』という職場がやはり多かったです。
定番のところではコールセンターなどでも働きました。そういう役者などが多い職場では『身内の不幸、何回やった?』みたいな話を同業同士でよくしていましたね」
思うように芝居に集中できない焦燥感を次第に募らせていくなか、積極的にアニメや声優の業界交流会に顔を出すようになった古川さんは、SNSで見つけたとある異業種交流会でマルチの勧誘に遭遇。気づけば、トータル400万円の借金までこしらえてしまう。
「その当時は『バイトの時間なんかもったいない』『もっと芝居に集中したい』という気持ちが強かったんです。でも、今も第一線で活躍している声優さんと話をさせていただく機会があった時に、『自分は50歳頃までバイト生活しないとここまで来られなかった』という話を聞き、『自分はそこまで頑張れるだろうか』『せめて他の収入源があれば……』という焦りが募っていきました」
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