両方を口に出して言ってみるとわかると思いますが、シンプルに単純形副詞のほうが言いやすいですよね。このリズム感というか、口なじみのよさから、口語では好まれる傾向が強いのだと思います。また、通常は単純形副詞にしないものも、比較級や最上級のときには単純形副詞にするというケースもあります。たとえば
△ Can you speak clear?
○ Can you speak clearer?
○ Can you speak loud and clear?
speak clearlyをspeak clearとするのは、ちょっと座りが悪いのですが、speak clearerと比較級にしたとたんにしっくりとするんです。でも、おもしろいのがloudとセットにしてspeak loud and clearだと、原級でも違和感があまりないんですよね……。『改訂三版 英文法解説(江川, 2008, §91)』を見ると
という記述もあり、実際にどのタイミングで単純形副詞を使用するかについては、何かルールがあるというよりは、ネイティブの感覚によるところが大きいようです。われわれ非ネイティブとしては、ネイティブの使用例に多く触れていくしかマスターする術はなさそうです。とりあえず、単純形副詞の使用例のひとつとして、「比較級と最上級」というのは覚えておきましょう。
単純形副詞にできる副詞は?
どんなときに単純形副詞を使うほうがいいのかは、ネイティブの感覚的なもののようですが、-lyのつく副詞のすべてが単純形副詞として使用できるわけではないというのはルールとして知っておいてください。-lyのつく形のときも、単純形副詞にしたときも、同じ意味で使用できる副詞でないと単純形副詞にすることはできないんです。『徹底例解 ロイヤル英文法 改訂新版(綿貫ほか, 2000, §135)』に、どちらの形でもほぼ同じ意味で用いることのできる副詞のリストがありましたので、見てみましょう。
cheap*(安く)
clean*(清潔に)
clear(はっきりと)
deep*(深く)
direct*(まっすぐに)
easy*(容易に)
fair*(公正に)
firm(断固として)
flat*(平らに)
loud(大声で)
quick(素早く)
right*(正しく)
slow(ゆっくり)
smooth(なめらかに)
strong(力強く)
tight(堅く)
wide*(広く)
*印の語は-ly形を違う意味でもよく用いるので注意。-lyのついた形とつかない形と両方ある場合、-lyをつけないほうの副詞は日常語または俗語などのくだけた表現に多く見られる。
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