「街づくりにはパン屋が最強」と言える7つの理由 日本における最強コンテンツをどう生かすか

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「仕事であちこちのまちに関わっていたものの、自分の住んでいるまちでは何もしていないことに疑問を覚え、また、関わっていた地元商店会の人に悪意なく、『不動産を持って商売していない人は身軽でいいね』と言われたことにショックを受け、地元で不動産を購入しました。現在、パン屋になっているのはそのうちの2軒目です」

借地権の上に建つ古い建物をリノベーションして、2階以上をシェアハウスとして貸し、いずれは地域に影響力のある1階で何かビジネスをしようと思っていたところ、スタッフの女性たちから仕事がつまらないという不満の声が挙がった。

リノベーションスクールで全国を飛び回っていたため、本業である建築設計の仕事を増やすと手が回らなくなる。そこで設計の仕事は抑えめにしていたのだが、設計がやりたくて入社したスタッフからすればつまらない。もっと仕事をやらせろというわけだ。

「カフェかパン屋がいい」という意見

そこで思いついたのが空いている1階をスタッフでコンテンツを考えるところから始めて設計・利用してみるという手。建物があるのは住民以外歩いていないような静かな住宅街の裏路地で、新宿区、文京区、豊島区3区の区境に近く、行政としてはまちづくりに熱心になるとはあまり考えられないエリア。そんなところにこんな店が!という驚きがある店を作ろう。多くの人も思いつくのはカフェか、パン屋だろう。

この2つが候補になったのには理由がある。ちょうどオフィスの引っ越しを検討していた時期でもあり、1階にパチンコ店が入っている立地と日当たりのいいビルをみつけ、スタッフに相談したところ、女性スタッフ全員からノーと言われたのである。ビルの1階に何が入っているかはビルの雰囲気を決める、パチンコ店の入っているビルでは働きたくないと言われたのだ。

そこで嶋田氏が、「何が入っているビルならいいか」と聞いたところ、「雰囲気のいい店舗、例えばカフェやパン屋」という答えが返ってきた。ビルの価値は1階が決めるのだ。だとしたら雰囲気のいい、周囲の人が訪れたくなるカフェ、パン屋のいずれかを作ろう。

だが、間口1間強の細長いスペースにカフェを作るのは難しい。客を入れると通路部分が多くなり、効率が悪いのだ。その点、パン屋であればあまり一般的ではないものの、店内に客を入れない形式もありえる。

「店に入れない」というのもパン屋だったら成り立つ(写真:筆者撮影)
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