「住みたい街」劇的変化に鉄道会社が抱く危機感 東急「池上」に見る地域開発に起きている変化

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地元を中心に変化が生まれつつある東急池上線池上駅周辺。写真右手の、植栽のある建物1階が活動拠点「SANDO BY WEMON PROJECTS」(写真:筆者撮影)

コロナ禍で通勤客が減少し、鉄道会社が岐路に立たされている。JR東日本をはじめ、来春以降終電繰り上げなどで赤字を減らす方途を模索する会社も少なくないが、それだけでは全体として縮小に向かうだけ。では、どうすればいいのか。鉄道そのものではなく、鉄道の通る街を変えることで未来のビジネスを模索しているのが東急である。

「住む人に選ばれる街」が重要になる

2020年8月、9月に大田区・池上の住宅街に3つの場が立て続けにオープンした。会話や交流が生まれることを目指す多目的スタジオ、アウトプット型探究学習塾が運営するシェアスペース、設計事務所と動画配信スタジオオフィスに併設されたギャラリー・イベントスペースに作られた一箱書店「ブックスタジオ」である。池上といえば、力道山が眠る池上本門寺がある閑静な住宅街だが、そんな街で地域を中心に東急も一員となったプロジェクトが進んでおり、上記の3カ所もその一環である。

 東急池上線では2017年に東急が主催、大田区後援のリノベーションスクールが行われ、以降空き家の活用や、街の活性化などが模索されてきた。2019年3月には東急と大田区が駅を中心とした地域の持続的な発展を目指す基本協定を締結。池上をモデル地区として「池上エリアリノベーションプロジェクト」を立ち上げ、同年5月には池上本門寺通り商店街の入り口に活動拠点が誕生した。

そのプロジェクトの中心的な取り組みである空き家・空き店舗活用支援で誕生したのが上記のブックスタジオなど。短期に形になったことも驚きだが、特筆すべきはそこに地域の人たちが多く、自発的に関わっていることだ。

ほかの街の様子を知っている身からすると驚くべきスピードだが、その理由は関わった人たちと話をしてみてわかった。池上は本門寺の門前町でもともと店をやっているなど個人事業主が多いのだが、今回の空き家利用者たちも職場と住まいが近く、池上で仕事をしている人も多い。つまり、この街の盛衰がそのまま自分の仕事に直結するのだ。

郊外に家を持ち、通勤電車で都心へ通う──。日本では戦後からずっと「働く」と「暮らす」をオフィス街と住宅街に分離してきたが、コロナ禍で広まったテレワークをきっかけに転換しようとしている。通勤客が減っている中で、単に寝るためだけでなく、働く、遊ぶといった機能も持ち合わせる「住む人に選ばれる街」を作ろうとしているのは東急に限ったことではない。

2020年9月に西武線所沢駅直結の商業施設「グランエミオ所沢」の開業式典で西武ホールディングスの後藤高志社長が語った「これまでの所沢はベッドタウンだったが、今後はリビングタウンに変わる」はその好例。あちこちのメディアで紹介されていたのでご覧になった方も多いだろう。

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