新宿「賞味期限切れ」が問う日本式街作りの大問題 新築をしない再開発目指す「馬喰横山」の挑戦

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渋谷や浜松町に比べて、路線価の値上がり率が低い新宿。特に歌舞伎町あたりの値上がり率が低迷している(写真:まちゃー/PIXTA)

3~4カ月に一度、路線価図を持って街歩きをしている。現地を歩いてみると土地の価格が地形や歴史、防災的安全性に大きな影響を受けていることや、住宅中心の再開発では周辺への波及効果が想像以上に低いことなど、さまざまな発見がある。

時には意外な気づきもある。2021年5月に令和2年の路線価図を手に新宿駅周辺を歩いたのだが、それ以前に歩いた浜松町、渋谷に比べると路線価の値上がり率が低かったのだ。

新宿には実質的マイナスとなっている場所も?

浜松町の場合、都心部であることに加えて、周辺に虎ノ門から新橋にかけての大規模な開発などがあるため、渋谷よりも値上がり率は高く、この8年でみると平均で60~70%というエリアが広がる。渋谷は駅周辺などでこの10年で200%、300%アップもあるが、平均的には50%前後からが多く、宇田川町の一部や円山町、神泉などには30~40%というエリアも。

ところが新宿では再開発エリアで100%、200%アップはあるものの、30~40%前後のエリアが広範囲にわたっており、歌舞伎町ではこの15年で10%以下しか上がっていないところもある。物価などの変化を考えると、15年で3%や5%のアップは実質的にはマイナスだろう。浜松町、渋谷、新宿で比較する期間は違っており、新宿は最も長期で比較しているにもかかわらず、ほかの街より値上がりしていないのである。

この違いは再開発で説明できる。浜松町、渋谷では現在進行形で大規模再開発が行われているが、新宿では今も開発はあるものの、西口の大規模再開発は1991年の都庁移転で終わっている。

それから2010年近くまでは空白の時間があり、2010年前後からの開発は半分あるいはそれ以上が住宅という例が大半。前述したように住宅の開発は路線価アップにはあまり貢献しない。つまり、新宿では再開発の賞味期限が切れてしまっているのである。

新宿に関わる事業者はすでにそれに気づいており、副都心の事業者が一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会の前身を発足させたのは2010年6月。2014年にはまちづくりの担い手としての公的な位置づけを得るために法人格を取得するなど活動を続けている。

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