【最新研究】要介護高齢者のQOL向上には「寒暖」より≪明るさ・におい≫対策がカギ! 安価で始められる、理想の住宅環境づくりとは?

“団塊の世代”の全員が75歳以上の後期高齢者となる2025年。世界有数の超高齢社会に突入した日本では、高齢者のQOL(生活の質)向上が大きな課題だ。国土交通省が2022年に発表した『高齢者の住まいに関する現状と施策の動向』によると、高齢者の9割は自宅に居住しており、要介護高齢者の8割以上が在宅介護を受けているという。
高齢者が1日の多くを過ごす自宅を、より快適に整えるには何が重要か。千葉大学予防医学センター 社会予防医学研究部門の河口謙二郎特任助教が行った調査から、意外な事実が浮かび上がった。
住宅環境がいいほど要介護高齢者のQOLが高いと判明
「古くなった実家に住み続けている高齢の両親が心配……」
そんな不安を抱える40~60代の読者は少なくないだろう。国土交通省が2020年に発表した『住宅・宅地分科会資料』によれば、昭和55年(1980年)以前に建築された住宅のうち、約7割が高齢者世帯。団塊の世代が働き盛りの頃にマイホームを購入し、時を経て子どもたちは独立。定年退職後もそのまま、築年数を重ねた住宅に住み続けるパターンが多く見られる。
これについて、前述の河口謙二郎さんは、
「高齢者のほとんどは、年齢を重ねても慣れ親しんだ自宅に住み続けることを希望しています。自宅で多くの時間を過ごす高齢者にとって住宅環境の整備はとても重要ですが、多くは築年数の古い住宅に住んでおり、断熱効果などが不十分であるケースが多く見られます」
と話す。内科医として高齢者宅の訪問診療の経験もある河口さんは、これまで高齢者の住宅環境とQOLの関係性について研究を続けてきた。2022年には、在宅要介護高齢者と、その主な介護者に限定した調査を実施。
「夏に冷房が利かなくて暑い」/「冬に暖房が利かなくて寒い」/「窓やドアを閉めても、室内や外の音振動が気になる」/「においがこもる」/「夜間照明が足りず暗い」/「防犯に不安を感じる」
上記6項目について、「多くある(0点)」「部分的にある(1点)」「ほとんどない(2点)」「ない(3点)」の4段階で回答を収集し、合計点を総合スコアとして算出。2025年にはこの調査結果をもとにして、新たに各項目と「精神的健康状態」との関連性をまとめた。その結果、住宅環境がいいほど要介護高齢者のQOLが高いことが明らかになった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら