新宿「賞味期限切れ」が問う日本式街作りの大問題 新築をしない再開発目指す「馬喰横山」の挑戦
ここへ来て小田急百貨店の大型複合タワー建設、明治安田生命新宿ビルの建替え、西口のヨドバシカメラ周辺エリアの再開発協議などさまざまな計画が話題になっているのも同じ流れ。事業者だけでなく、新宿区も新宿の地盤沈下に危機感を抱いているのだ。
だが、街の賞味期限が切れた場合の対処法はもう一度大規模開発をやってすべてを新しくすることだけなのだろうか。それしかないとしたらエンドレスにスクラップ・アンド・ビルドを繰り返すことになるが、解体や建設にかかるコストや環境への負荷、オフィスや住宅の充足度、投資額と将来の価値の収支バランスなどを考えるといろいろ疑問がある。
新宿のようなターミナル駅であればまだありうるのかもしれないが、そろそろ違うやり方も考えるべき時期ではないかと思うのである。
問屋街が考える新築しない再開発
そこで参考になるのが現在、中央区の日本橋横山町・馬喰町問屋街地区(以降問屋街)で行われている新築しない再開発である。もちろん、建物の更新はありうるので、まったく新築しないということではない。だが、ひとまとまりの土地を全部更地にして一から街を新しくするような開発は現時点で考えられてはいない。
大規模開発が進む日本橋に隣接していることから開発圧力は非常に高いが、それには土地、建物の買い支えで対抗。建替えで街が一気に変わるのを阻んで時間を稼ぎ、その間に地域の人たちが描く未来像に向けて街を少しずつ変えて行こうというのである。
このエリアは江戸時代初期、1657年の明暦の大火で移転した寺社の跡地に商家が開かれたことを契機に発展。時代に合わせて売り物を変えながら問屋街として生き残ってきた。現在の経営者の多くは生き残りのためには変化が必要であることを理解している人たちであり、その考えは街に対しても同様。
問屋だけの街としての継続が難しいことはわかっているが、といってもマンションとホテルだけの街にはしたくない。問屋街は現在、ファッションが中心になっており、経営者たちはそのクリエイティビティに誇りを持っている。であれば、現在の街と親和性の高いクリエイティブな経営者、住民に入ってきてもらうことで問屋を核としつつ、商、工(工房)、住が混在するこの街らしい未来を描こう。それが現時点での開発の方向である。
だが、問屋経営者だけでは目指す未来の実現は難しい。そこで地元の経営者で構成される横山町馬喰町街づくり株式会社は学識経験者に相談、そこで独立行政法人都市再生機構(以降UR)を勧められたことから、中央区に仲介を依頼し、2015年から一緒に関わることになった。
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