「街づくりにはパン屋が最強」と言える7つの理由 日本における最強コンテンツをどう生かすか

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パン屋は地域に眠っている才能や、やる気を引き出す仕事というわけで、これは間違いなく6つ目の理由である。どのような仕事であれ、楽しい場所に人は集まる。

従来のパン屋は朝早くから仕込みをする重労働だったが、素人が始めた神田川ベーカリーにはパン屋かくあるべしという発想がなかったため、朝8時スタートで夕方6時には帰れるようになっている。それでいて自分の好きな仕事ができるとなれば、世の中の人手不足もなんのその、人が集まる。しかも好きで働いているからクオリティーも高い。

「パン屋だけでなく、建築事務所も従来はブラックな働き方が当たり前とされていましたが、それでは今後は若い人たちに選ばれない。まちづくりだけでなく、それ以外の仕事でも今後は働き方から見直していくべきでしょう」

職人3人を雇って営業するほうが味も安定し、シフトを考える必要もなくなるが、その体制で1人が辞めると途端に店は回らなくなる。それを考え、多くの人が関わる場にするためには今のやり方がベストというわけだ。

バリエーションの豊富さも魅力

楽しく関わっている、好きだから働いているとなるとアイデアも出る。幸い、パンは商品としての幅が広い。種類もアレンジも無数と言えるほどあり、神田川ベーカリーでもスタッフからの提案で新商品が多数生み出されている。新商品誕生は作る側には働く喜びであり、買う側には新しい楽しみになる。

パンの魅力は種類もアレンジも無限ということだ(写真:筆者撮影)

まちづくりでは、ここに来たらいつも何かがある、誰かがいるという期待感を抱かせる場所を作ることが大事だと思うが、パン屋ならそれができるのである。というわけでこれが7つ目の理由である。

さらにコロナ禍は、「まちづくりにはパン屋」という考えの追い風となっている。自宅で仕事をする人が増え、自分が住んでいる地域に目が向くようになったからだ。遠くまで行かなくても、近所に毎日を楽しくしてくれる美味しいものがあれば、それがそこに住む理由の1つになり、地域の魅力になる。これをまちづくりと言わずして何というか。美味しいパン屋はまちを作るのである。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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